ハロー・グッバイ#4






転校してから一ヶ月ほどが経った。


5時間目の授業。西日が当たるこの教室。
昨日の席替えで窓際の席を引いてしまったあたしは
これでもか!というくらい眩しい日光に晒されている。
左半分がやけに熱を持っている。暑い。
カーテンを閉めればいいのだが、今日は気温も高い所為で窓も全開。
カーテンは本来の役割の日光を遮るどころか、
強い風によってバサバサとあたしの視界にちらつくだけだった。

(カーテンの役立たず!)

数学の公式を写す気にもなれず、さり気無く後ろを見た。
どうやらこのモジャ頭もあたしと同じ状態らしい。


「暑くない?」

気だるそうな彼に話し掛けた。

「暑い。死ぬ。」
「どんまい。」


どうやら彼は相当不機嫌なようだった。
これ以上会話も進む筈はなく(そもそも今は授業中)、
あたしは横に向けていた身体を正し、黒板の方に向けた。


「あ、そうだ。」


さてと写すか!と思った矢先、後ろの切原からペンで背中を突付かれた。
後ろを振り向く。彼はジッとあたしをみるとニマニマと笑う。


「何?」
「最近どう?」
「何が?主語を言ってよ。」
「丸井先輩v」


切原はヘヘッと笑いながらあたしを見た。ご丁寧にハートマークまでつけて。


「その名前を口に出さないで、気分悪くなる。」
「そんなに怒るなって。」


そう丸井ブン太があたしの前に現れて以来、
奴は廊下や玄関、あらゆる所で会う度にいちゃもんをつけてくるのだ。
出会った当初は行き成りメルアドを聞いてきて、かと思えば
あたしに嫌味を吐いて。第一印象は最悪最低。
なのに、会うたびに話し掛けてくる。わけがわからない!


あー名前を聞いただけで腹が立つ!!嫌いだ、あんな奴。






だが、悲劇の幕開けはここからだった。







◇







「それじゃあ、体育祭実行委員はさんと切原君に決定しました。」



クラス中に拍手が鳴る。

最悪だ。運悪くジャンケンで負けてしまい、体育祭の実行委員となってしまった。
委員長の(意外としっかり者なことに驚いた)に「意気込みをドウゾ」と言われ、
不本意ながらもその場に立ち、一言「頑張ります。」と言う。

反対に切原は意気揚々としていてる。
彼はあたしを見るなりニヤリと微笑んだ。



「知ってるか、?実行委員は無料で打上げに参加できるんだぜ。しかも焼肉!」

・・・ああ。そういうこと。





 *





俺ってかなり幸運の男だと思う。



「なんで居るのよ。」
「あ?俺も実行委員になったんだよ。」
「へえアンタが。」
「アンタじゃなくて丸井ブン太。ブン太先輩でいいぜ?」
「呼びません。」


クラスの女子や男共に指示されて、仕方なくなった実行委員。
部活に出る時間も減るし、面倒臭いから嫌だった。
でもまさかも一緒だったとは(赤也もいるけど)。偶然、いや運命なんじゃね?

ま、相変わらずは嫌そうにしているけれど。


「あ、俺『』って呼ぶから。」
「勝手にすれば。」
「…丸井先輩、始まるっぽいっすよ。」


の隣に座る赤也が俺に向っていう。
これから体育祭実行委員の会議があり、それぞれ学年学級ごとに座っている。
そうなると必然的に赤也はの隣。俺は三年だから離れた席。

俺がのそばから離れるや否や、赤也はにちょくちょくと話し掛けている。
俺はそれを離れた席からただ眺めるだけ。
笑い合うと赤也を見ても俺は不愉快な気分になるだけだった。
あのワカメ野郎・・・。


(テニスしてー・・・早く終われー!)


こんなことなら実行委員にならなきゃよかった。
椅子にドカッと座り、不機嫌なまま委員会を過ごす。


頬杖をつき、ふと考えた。


(は、赤也が好きなのか…?)


いや、そんなことはない!多分。
頭をぶんぶんと振り、くだらない考えを排除した。
そしてそのまま目を瞑る。


見たくないなら、見なきゃいい。













    
(080229)