雨は嫌い。

綺麗な星も夜空も月も見れないし、

酷いときなんか道路中みみずだらけで気持ち悪い。

真っ黒な傘なんておじさん臭くて大嫌い。















跡部の言葉がずーっと脳内で繰り返される。不快だ。不愉快極まりない。


「真っ黒な傘なんて悪趣味だな。」
真っ黒な傘のどこが悪い。おじさん臭いのなんて知っている。

「雨の日は髪を巻けばくせっ毛もカモフラージュできるぜ。」
くせっ毛を隠したいわけじゃない。単純にストレートが好きなの。




そう言い自分に言い聞かすも。どこか心は晴れなくて。

気がつけばもう自宅前。あれ、どこか適当な店に寄るはずだったのに。

このまま家に入っても、特にやる事もなく暇だろうと判断し、

今来た道を戻る。



ああ。むしゃくしゃする。道端に落ちている小石を小学生の様に蹴ってみたが、

見事に失敗。10センチほど転がっただけで小石は動きを止めた。


跡部の言葉がひっかっかって仕方がない。

そもそも真っ黒い傘を持つようになったのは誰の所為?

ストレートの髪型にし始めたのは誰の所為?




全部、二年前の貴方のせいなのに。










   ■










「跡部君ってどんな子が好き?」

「あーん?俺はどんな女でも好きだぜ。」

「本当?本当の本当?」

「強いて言えば、ストレートロングヘアーが好きだな。清楚な感じがするだろ?」

「そうなの!?じゃあ私明日からストレートにする!」

「わたしも!」

「あたしも!」







中学一年生にしてすでにモテモテだった跡部の周りには、

常に(既に)女の姿があった。

きゃぴきゃぴした女子じゃなかった私は静かに本を読んでいるタイプだった。

図書室なんか大好きで、毎週必ず行っていたと思う。

教室で本を読んでいたら忍足に話し掛けられて仲良くなった。




本を読みながら跡部と女の子の会話をこっそり聞いて、

ストレートヘアーだと跡部と話せる!なんて勘違いした私は

即刻ヘアアイロンを購入し、翌日から真直ぐな髪にしていった。



「好きな色は黒とゴールドだ。」



なんて聞いた時は意味もなく、黒とゴールドの小物を探したりして、

仕舞いにはお父さんにせがんで真っ黒い傘を学校に差していった。

他の女の子がピンクや黄色の可愛らしい傘を差す中、

自分は人とはちょっと違う、なんて得意げになっていた。



もちろん、跡部と話すことはなく一年が過ぎクラスが変わり、

そしてまた一年が過ぎ、あっと言う間に三年生になってしまった。









   ■









着いた所は本屋。暇を潰すならやっぱりここが一番だ、という私の判断のもと。

文房具から雑誌漫画文庫本絵本。比較的様々な種類を置いているこの店の奥に

ひとつ、珍しい物を見つけた。


傘だ。赤や青や緑やピンクの水玉模様。


決して超可愛い!とは言えないけれど、今持っている黒い傘より

幾分ましなその傘を眺め、一つ手にとった。




黄緑と黄色の水玉模様。




別に跡部に言われて悔しいからじゃない。黒い傘が嫌いなわけじゃない。

この傘が私を呼んでる気がしたから。だから買っただけ。


レジに行き、お金を払うとすこしウキウキ気分になり、

早速傘を差す。まだ値札がついているけど、気にしない。







家に着いた。

自分のベットにダイブして目を瞑る。明日この傘を差してみようか。

もしかしたら明日跡部が話し掛けてくれるかも、なんてまるで初恋をしたような

気分になりながら眠りに落ちる。別に跡部に恋しているわけじゃない。

今日初めて話せたことに少し感動しただけ。同じ世界を共有できた気がして。


















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傘を変えたら世界が変わった。
自分も変われる気がした。
貴方は気付いてくれる?
[2007/10/21  piyo]