雨は嫌い。

歩いているだけで車から泥を掛けられるし、

靴の中に雨がしみこんで靴下も濡れるし、

音なんかいつもザーザー五月蝿くて大嫌い。















授業が終わり、ホームルームが終わり、今日の学校が終わった。

雨は今朝からずっと降りっぱなしで止む気配は無い。

隣の席の忍足や友達にバイバイと言い、私は教室を出た。


今日は部活もないし、帰りは本屋にでも寄って帰ろうか、

なんて考えながら玄関で靴を履き替る。


傘立てから黒の自分の傘を取れば、そこには人が一人。

腕組をして足をパタパタさせて、どうやら雨が止むのを待っているようだった。

(待っても止む事は無いのに・・・)


他人事のように(他人事だけど)考え、その人の横を過ぎる。



「オイ。」



行き成り声を掛けられ、私は思わず振り向いた。

その低い声、青い目、茶色の髪、高い背、知ってる。超有名人。

一年生のときだけ同じクラスだった人物。一度も話した事は無い。

生徒会長、テニス部部長、跡部景吾。















「…なんですか。」



ものすごく間をおいてから返答をする。

彼の顔は険しくて不機嫌で私を見るなり目を細めた。

そしてフッと笑った。無駄に余裕の笑み。一体何なの?



「なんだ。か。ちょうどいい。」

「だから何の用。帰りたいんだけど。」

「ちょっと傘貸せ。」



そう言うなり跡部は私の傘を奪って歩き始める。え、待って!冗談じゃない!

私は急いで跡部の腕を掴むとキッと睨んだ。



「勝手に使わないで。私帰れないでしょ。」

「部室練まで行って帰ってくるだけだ。10分で済む。」

「その10分も貴重なの。」











   ◇











一体どこからこうなったんだろう。

今私は段ボール箱を両手で抱えていて、隣には私の傘を差した跡部。

何故か部室練まで一緒に行って(しかも相傘で)何故か私は荷物持ち。

学校用リュックも背負って段ボールも持っているのに、何故跡部は手ぶらなの?



「どっからこうなったんだ…。」



私が小さく呟くと跡部が気付いたらしく鼻でフッと笑った。

いちいちむかつく男。



「が俺に傘を渡さないからだろ。」

「そうか…そこからか。じゃあなんで荷物を持っているのよ。私が。」

「が傘を差したら低すぎて俺が入らないだろ。」

「てゆうか何で名前知ってるの。」

「元とはいえクラスメートの名前くらいは覚えている。」

「あ、そう。」

「真っ黒な傘なんて悪趣味だな。」

「地味で最高じゃない。」



さっきからこんな調子。話したこともないような男と相傘なんて信じられないけど、

実際コイツと話してみれば気まずくはない。最も楽しいなんて事は全くないんだけど。



「お前さ。」



玄関が近付いてきた頃、跡部が口を開いた。



「何よ。」



あと5メートルで玄関。ああ、やっと帰れる。

私は跡部を見た。なんだか身長差の所為で見下されている気分。



「雨の日は髪を巻けばくせっ毛もカモフラージュできるぜ。」

「・・・ご忠告ありがとう。はい、終了。」



玄関に着くと段ボールを下ろし、私はすぐに雨の中に飛び出した。

もちろん跡部から傘を奪って。



「じゃあな。」



雨の中微かに聞こえた跡部の声を無視して、

只管に、せかせかと歩いて帰った。


だから嫌い、雨の日なんて。

















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本当はちょっと嬉しかった。
まさか名前を覚えているなんて。
でも君は世界が違いすぎる。
[2007/10/21  piyo]