ハロー・グッバイ#1 「昨日、うちのクラスに転校生がきたんスよ。」 それは、部活後の部室で赤也が放った一言。 ◇ 「へえ。どんな子?可愛いの?」 俺はワイシャツのボタンを締めながら赤也に言った。 赤也はテニスバックからスポーツドリンクを取り出すとゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。 「ぷはっ。美味い。」というビールを飲んだ親父のような声を出すと俺の質問に答える。 「そうっすね、背はそんな高くないっス。髪は肩らへん。」 「ふーん。所謂フツーの子?」 「へへっ、ところがどっこい!顔がめっちゃ可愛いんっスよ!」 「ふーん・・・。」 (可愛い子・・・ねえ。別に興味ねーけど) 俺も鞄からドリンクを取り出して飲む。常温に置いた所為で温(ぬる)くなっているが、 渇いた喉を潤すには問題ない。飲んでいる最中の俺に赤也は話し掛ける。 「あ、ブン太先輩気になってるっしょ?」 「ぶふっ!ゴホゴホッ・・・。」 「うわ、噴出さないで下さいよ!?……大丈夫っスか?」 噴出す寸前のところでドリンクを飲み込む。やべっ!器官に入った! 咳き込む俺を赤也はすこし心配そうに見る。元々はお前の所為だっつーの。 俺はゆっくりと深呼吸をして呼吸を整えた。 「あー焦った!死ぬかと思った。」 「丸井先輩ってわかりやすいっスね。図星っしょ?」 「別にー。」 「でも止めた方がいいっスよ。うちのクラスの男の大半がその子狙いっぽいんで。」 「お前も?」 「それはプライベートなんで秘密っス!」 「バーカ。」 (噂の美少女転校生・・・か。ふうん。) 「・・・なあ。」 ブレザーを羽織り、再び赤也に話し掛けた。 「何スか?」 「その子彼氏持ち?」 「さあ・・・可愛いからいるんじゃないっスか?」 「ふうん。」 「あ!ダメっすよ!先輩彼女いるんだから。えーと・・・ミオさんでしたっけ?」 「ア?んなのとっくの前に別れたっつーの。」 「え?嘘!いつっスか?」 赤也は目を見開いて俺に問う。 「一週間前。だから今彼女なってくれる子探してんの。」 「まさか・・・。」 「次はその子を彼女にするわ。俺可愛い子好きだし。」 テニスバックを背負い、部室のドアノブに手をかけた。 「美少女転校生に美男子天才児。ピッタリの組合わせだとおもわね?」 待ってろ転校生! 俺の足取りは軽く、鼻歌交じりに自転車のペダルをこいだ。< ◇ > (080122)