昨日の酷い暑さと打って変わって、今日の気温は6月とは思えない程肌寒いものだった。
空全体は薄暗い、厚めの雲に覆われていて太陽の光は全く見えない。
そんな後景を窓から眺めつつ、ビュウッと風に拭かれ揺れる木木をじっと眺めていた。
窓の外にじっと見るほど面白い物があるわけではないが、
黒板の解読不能な文字をみるよりは幾分ましなのだ。
「えー、次にf(I)のIに3を代入をし…」
数学教師の少し癖のある声が脳に響く。
だが響いた所で全く理解できない。否、理解しようとは思っていない。
まあいつかなんとかなるだろう、と右手でペンを回す。計算能力は上達しないが
数学の時間でペン回しの能力は無駄に上達してしまった。
(あとでがっくんに自慢しよっと)
なんて下らないことを思いつつ、パッと黒板を見る。
流石にそろそろ写さないとまずい。
と、タイミングよく数学教師と目が合った。
(げ)
すぐさま視線を逸らし、自分のノートを見ることに集中した。
が、残念。
「よし、じゃあ教科書p36の問2を…。それから問3を山之内。やってみろ。」
当てられてしまった。いや、なんとなく当たるかも…と予想は出来たけど。
言われたと通り教科書の問いを見てみるがさっぱりわからない。
「、教えて。わかんない。」
体を捻らせ後ろを向く。だが、そこには人の姿がいない。
(そうだった、今日はは休みだった)
頼りにしていた人物もいない。答えもわからない。
(どうしよう…)
隣の席の人もグッスリ熟睡していて起すのも申し訳ない。
通路をはさんで横の人物も、別の問題を解くのに集中していて
「話し掛けるな」というオーラを醸し出している。
そうなると、周りにいる人物で答えを聞けるのは斜め後ろに座る宍戸だけ。
一番前の席というのはこういうとき不便だなものだ。
(宍戸…話し掛けるの怖いなあ)
クラス替えをしてもう2ヶ月が経つが未だに話したこともない人も多い。
宍戸もその一人(しかも宍戸は女子とはあまり話さない)
というより、非社交的な私は話す人が固定されているのだ。
ましてや男子と話すことは話し合いだとかそういう必要に迫られた時しかない。
あまり仲良くない人に答えを聞くのも些(いささ)か申し訳ない。
仕方ない、自分で解くか。とペンを握ると「、早くしろ」と教師が急かした。
(わかってるし)
「」
ポン、と肩に何かが当たると同時に名前を呼ばれた。
自分の肩を見れば大学ノートの角が私の肩に触れている。
どうやら、宍戸がノートで私を叩いたらしい。
私は宍戸を見た。宍戸は私の肩を叩いたノートを開き、
ペンで答えの部分を示すと、顎で黒板を指した。
(もしかして、答えを教えてくれてる?)
予想外の出来事に少し驚いたが、私は「サンキュ」と小声で
宍戸に伝えると彼のノートを持ち、黒板の前に立った。
式と答えを書き終えると教師が「正解」と赤いチョークで丸をつけた。
「助かった、ありがとう」
「ああ」
座席に着き、後ろを向いて彼にノートを返すと宍戸はそっけなく受け取った。
左腕の時計を見るとあと1分でチャイムが鳴ろうとしていた。
生徒の多くがペンを仕舞始める。
筆箱のチャックを閉じる音や教科書とノートを整える音が聞こえる中、
私は視界の端で宍戸の姿を捕らえると、黒板に書いた数式をひたすら写した。
今日は貴重な体験をしたかもしれない。
それは些細な
ことだけど。
(意外な彼の優しさに、思わず顔がにやけた)
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宍戸はさり気無い優しさがあると思うんです。
普段は女子にそっけなくても
ただの照れ隠しだと思ってる!笑
そして名前変換すくなくてごめんね。
[08/06/15 piyo]