「亮!」と呼ぶ声がして、サッと後ろを振り向く。

否、振り向く前にギュっと背中に抱きつかれ、俺は身動きできない状態に。



実際、この状況が幸せだったりする。



後に抱きついたままの彼女を引きずりながら俺は歩く。

まあ所謂一種のスキンシップだが、俺は未だに慣れない。

もう1年も経つってのにな。




「なあ、重たい。(…てゆうか胸当たってる)」

「そんなことはないよ。亮よりも軽いもん。」

「ああ、そうかよ。(やべえって、鼻血出るって) あ!」



時計を見たら鐘が鳴るまであと2分。

無駄に広い氷帝の校舎は教室まで普通に歩いて5分はかかる。

俺はの手を取ると一気に駆け出す。



「オラ、走るぞ!!」

「ちょ、亮速いんだから!ついてけないって!」

「じゃあお姫様抱っこでもしてやろうか?」

「な・・なら走る!(///)」




平気で俺に抱きつくくせに、俺がからかうとすぐに顔を紅く染める。

汗ばんだ俺の手を握っても、嫌な顔せず強く握り返す。




そんなが愛しくてたまらない。












―――――---キーンコーンカーンコーン













「はあ、はあ、先生来てない?セーフ?」

「大丈夫みたいだぜ。あー、疲れた、とろすぎ。」

「とろくないし!亮が速いだけで「さあ、席につけ。そこの夫婦。」




の台詞を遮って担任が俺等に声を掛ける。

当の本人は 「ちょっとぉ、先生、最後まで言わせてよー」 なんて笑って言う。

そしてクラスはドッと笑いに包まれる。

クラスでもわりと人気者、ていうより、盛り上げ役の。

そして俺の自慢の彼女。




「さっさと席につけ、。」

「わかってますよ、亮。」




別に夫婦漫才じゃないぜ?これも俺等の1年前から始まった日常的なこと。













◆◇








「亮、今日もつけてる?」

「ああ、ちゃんとつけてるよ。」




そういって俺はワイシャツから掛けていたネックレスを見せる。

トップにはとお揃いのシルバーリング。半年記念に買った大切なもの。




「あたし、今日忘れてきちゃった…。」

「そんな凹まなくてもいいって。」

「ううん、凹む。だからそのお弁当のウインナー頂戴?」

「そうもってくるのかよ。ほらよ。」




の弁当箱に俺のウインナーを入れる。




「やった!ありがと。いただきまーす。」

「どういたしまして。どうぞ召し上がれ。」




うん、おいしい!なんて言ってもぐもぐと食べると小動物みたいで、可愛くて。

ああ、俺って本当溺愛してるなぁ、なんて実感する。





「亮。」





は俺の方を見るとニコッと笑って軽くキスをした。

キスなんて、とっくに済ましてたけど、不意打ちは結構ドキドキする。





「な、なんだよ行き成り。不意打ちは卑怯だろ。」

「大好きだよ。亮」

「・・・俺もだ。だあ!恥ずかしいこと」




































ハッ、と目を覚ますと目の前には真っ青な色と眩しい光が見えて、視界は歪んでいた。

頬を過ぎる雫。目頭に溜まった水―――ああ、俺、泣いてたんだ。




「夢・・・かよ。・・・ハ・・、ハハッ・・・。」




手で顔を抑えれば、顔はもうぐちゃぐちゃで、涙を拭こうにも、止まらなくて。

さっきまで見ていた夢はあまりにもリアルで、


の声も、 表情も、 行動も、 すべてが、 すべてが鮮明で。



涙が、さらに増した。






「だ、大丈夫ですか!?あ、ティッシュ要りますか?」

「いや、いらねえ。------の・・・の夢を見たんだ。」

「ああ・・・さんですか。もう2年経ちますよね。」




寝そべったまま、上を見る。気づけは俺は部室のソファで寝ていたようだ。

右手でワイシャツのしたに隠れていたネックレスを取り出す。

錆びたリングを見つめる。




「この指輪さ、3年以上前に買ったんだよ。

 が死ぬまではキラキラと光ってたんだ。1年以上経っても---だぜ?」

「はい。」

「でもよ、が死んだ次の日から、目に見えるように錆びていったんだ。」








付き合って1年半記念のデートの日。はデートに来なかった。

1時間待っても、2時間待っても。携帯に電話を掛けてみても、出る事は無かった。

仕方ないから、恥じを承知での家に電話をかけた。



そしたら―――――――――---は死んでいた。






なんでも、俺との待ち合わせ場所に来る途中、

横断歩道を歩いていたら居眠り運転のトラックが突っこんできたらしい。

は10メートルほど飛ばされ当たり所が悪く、頭を強く打って即死---と聞いた。







「行き成り消えるなんて、聞いてねえよな。

 つーか、なんで消えちまうんだよ!こんなにも、こんなにも----」








  好 き な の に !









「もっ、もう2年も経つのに…忘れられねえんだよ!のことが!っ…」




止まらない。拭っても拭っても、ボロボロボロと大粒の涙が流れてくる。





「がっ…のことが、に会いたくて仕方が無くて!

                     …ダセエよな。俺。」

「そんなことないですよ!寧ろ、忘れるべきことじゃないと思います!

 その思いは、大事に、大切にしていくべきです。」

「そうか・・・ありがとな。」





ギュッと目を瞑る。夢で見た、の顔が鮮明に浮かんでくる。

瞼に映るのは、の笑顔、泣き顔、拗ねた顔、照れた顔、真顔、怒った顔、俺を見るときの顔。

目を開ければ、がすぐ目の前にいて、「亮」と呼んでくれるのではないかと、

錯覚してしまう。期待してしまう。――――――そんな事は、一生ないのに。







涙は、まだ止まらない。心も消化されない。






俺は、シルバーリングを握り締めた。


を思うように。---------強く、強く。








錆びリング





































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君の死を僕は未だに受け入れれない。
会いたい、会いたい
会えない痛みが、こんなに辛いなんて。
[07/08/03 piyo]
[09/01/01 修正]