彼女は僕を魅了した。







家から立海大まではバスで45分。

毎朝6時半に家を出て、学校に着いたらすぐに朝練をはじめる。

それが日常であり習慣である。

朝練は入学してからずっと休む事無く出てきた。




しかし・・






(しまった。寝坊してしまった!)







柳は急いでパジャマを脱ぎ、ワイシャツに着替えた。

バタバタと階段を降り、洗顔を済ますと急いで食卓に座った。

柳の母が用意した朝食(紅鮭と豆腐の味噌汁)を急いで食べる。


味噌汁を飲み乾すとうがいをし、柳はすぐに玄関を出た。

台所から母の「いってらっしゃい」という声が聞こえた。









(遅刻決定か・・・)






バス停で腕時計を見ながら柳は思った。

朝練は午前7時半から始まる。練習内容は基礎練を中心としている。

勿論、参加は強制で、遅刻者には恐ろしい罰ゲーム(真田の鉄拳あるいは説教)が待っている。

(赤也とブン太はよく罰ゲームを受けていた)

柳は一度も遅刻する事無く参加してきた。所謂、皆勤賞だ。

自分でも引退するまで休まないとを決めていたのに・・・。






バスが来た。バスのステップを踏み、一番後ろの席に座る。

営業所から一番近いバス停のため、席はとても空いている。





(何という失態だろう)




真田の鉄拳が恐ろしいわけではないが、これでは後輩に示しがつかない。

ふう、と溜息をつく。外はとてもいい天気だ。








それから、バスが動いても柳はジッと窓の外を見ていた。

車内は徐々に混んで来きたようだ。




「座っても良いですか?」





声を掛けられ、柳はその声の主を見るため振り返った。

女性が一人。柳は目を奪われた。







美しい人だった。真直ぐなブラウンの髪に大きな目。綺麗な肌。

同じ立海大の制服を着ていたが、初めて見た。

いや、案外自分が周りを見ていなかったかもしれない。



女性が隣に座った。柳はさり気無くテニスバックを自分に寄せる。



無性にドキドキした。これが一目惚れというものなのか。

一秒一秒が長く感じれた。

チラリと横の女性を見る---と、目があった。





女性は軽く微笑む。






――――ドキッ








*







それから30分。バスは立海大の前に着き、

柳はテニスバックを背負った。勿論、隣の女性もスクールバックを背負う。



バスから降りると彼女は校舎側へ、柳はテニスコートへ向った。

時々振り向いては、彼女が去って行くのを確認しながら。

柳の心臓はいつもよりも強く波打っている。

部室で真田に会い、説教をされても、柳はそれどころじゃなかった。










(どうやら彼女に魅了されたようだ)












柳は一人微笑した。

その後、柳が彼女の名を調べたのは言うまでもない。

================
◆拍手お礼夢[10/12〜1/5]
名前変換なくてゴメンなさい。