「なぜ、付き合っているの」と聞かれ、
「愛しているから」と君は答える。
「なぜ泣いているの」と聞かれ、
「悲しいから」と君は答える。
震える手に零れた泪
人影一つ無い廊下をコツコツと歩く。両手には束になったプリントが2冊。
今日は珍しく委員会があった。もう6時半を過ぎている。
今から部活にいくと一体何分練習が出来るか。
ウォームアップも含めると30分以上準備はかかる。
今日は無理だろうか。柳生は考えていた。
柳生が入っている国際交流委員というのは海外の姉妹校との交流を図るためにある。
立海大では毎年10月に“立海大姉妹校交流会”というものがあり、
立海大学の広いキャンパスで交流会が行われる。
ちょっとした内輪の文化祭のようなもので、楽しみにしている生徒も少なく無い。
出し物も定番の演劇部公演、合唱部公演、吹奏楽部公演、などの部活の発表会から、
野球部のクレープ屋さん、ソフトボール部のたこ焼き屋、PTAによる焼肉・焼き鳥など様々である
部活やクラスでの出店は自由だが、売上の10%が部費やクラスに割り当てられる為、皆燃えている。
もちろん、異国の美女や青年と出会える場でもあるため、張り切っているのも事実だ。
ただ、それは表の顔。
国際交流委員は自動的に実行委員となるため、これから毎日委員会付けの日々となる。
予算の確認、相手校の人数確認、出店内容の調整などなど、面倒臭いことがいっぱいある。
柳生はなぜこの委員会に入ったのだろうかと自己嫌悪におちていた。
姉妹校の生徒と事前に接触を持つため英語力を磨けるのは間違いないが、
これほど面倒臭い物とは・・・。しかも、もう1人の委員である女子は「用事あるから」と
さっさと帰ってしまった。少々腹立たしい。
教室の前に着き、照明がついてないことを確認する。
(もう誰も残っていませんね・・・)
柳生はドアを開けた。
(!!!)
すっかり外も暗くなり、部活の無い生徒は殆ど下校したというのに、
女子が1人教室にいた。自分の机に顔を伏せて。
(・・・さん?)
後姿と真直ぐなロングヘアーでと判断した。確か彼女は帰宅部。
柳生はプリントの束を自分のロッカーに入れ、に近付く。
彼女は眠っているようであった。顔こそは見えないが、耳が赤い。
(・・・泣いているのでしょうか)
柳生は起こすか起こさないか迷った。もう日も落ちているし、最近不審者が増えている。
早く帰宅したほうがいいのでは---柳生は起こすことにした。
「さん?起きて下さい。帰ったほうがいいですよ。」
は「んん・・・・」と小さく唸ると顔を上げた。柳生を見る。
「あれ、柳生くん。あたし寝てた?」
「はい、しっかり眠っていました。」
「ヤダ、恥ずかしいな。鼾(いびき)とかしてなかった?」
「大丈夫です---といっても今教室に入ってきたばっかりなのでわかりませんが・・」
「ならよかった。」
は時計を見た。「もうすぐで7時だ。」と呟いた。
柳生はの顔を見た。耳が赤い。鼻が赤い。目が充血している。
100%泣いていたようだ。しかし何故?聞くべきかそっとしておくべきか。
そっとしておくべきかもしれない。しかし。気になってしょうがない。
仮にも---好きな女性が泣いているのだから。
「柳生君は部活行かなかったの?」
「いえ、委員会がありまして。国際交流委員会が。」
「そっか、交流会もうすぐだもんね。楽しみ〜」
はニコッと笑った。柳生も微笑み返す。
「さん、お聞きしても良いですか?」
「なんでしょう?」
「・・・どうして--------泣いているのです?」
「(!)」
は柳生から視線を逸らし、口を紡いだ。柳生が続けて言う。
「目が充血しています。耳も鼻も少し赤くなっています。
何か悲しいことでもありましたか?聞くだけでよければ、
いくらでも私が相手しますよ。 ・・というより、話してくれませんか?
さんの支えになりたいんです。」
は柳生を見て微笑んだ。窓の外に視線を移す。ポツリ、と喋り始めた。
「あのね、付き合っている人がいるの。いや、性格には『付き合ってた』かな。
サッカー部の山口君って人なんだけど。」
「知っていますよ。なんでも1年生の頃からエースでレギュラーの人だとか。」
「そうなの、すっごくサッカーが上手なの。3ヶ月くらい前から付き合い始めたの。
サッカーしている姿に一目ぼれしちゃって。
でも、テニス部には敵わないけどサッカー部もファンが多いの。
だから山口君に言い寄る女の子も多くて。
山口君も結構プレイボーイの体質みたいで、その・・・・」
「浮気・・・ですか?」
「・・・うん。二股掛けられてた。しかも相手は年上女性。チュープリまで見ちゃった。」
「キスのプリクラ・・・それは辛いですね。」
「今日ね、問い詰めてみたの。『この女誰?』って。そしたら『ただの友達』だって。
そんな訳ないでしょ、って何度も聞いた。
そしたら『シツコイ、ウザイ』って言われちゃった。あは・・・」
の目から涙がこぼれる。柳生はたじろいだ。
膝の上に置かれたの握りこぶしが微かに震えていた。
強く握る手の上に、涙がひとつ零れる。
「さん、どうぞ。」
柳生はポケットからティッシュを取り出す。それをに渡した。
*
それか10分程経った頃だろうか、ずっと泣いていたが口を開いた。
「ごめんね、こんな見苦しい姿みせちゃって。ティッシュもありがとう。
あー、沢山泣いたらスッキリした!柳生君のおかげかな。」
「礼には及びません。ただ、ここにいただけですから。」
「それでも、なんか嬉しかったよ。ありがと。」
柳生は眼鏡を上げなおした。
「もう一度、質問をしても良いですか?
まだ、------まだ、彼を愛していますか?」
「それは・・・・・・
まだ尾をひいてる。けれど、いずれ別れる運命にあったんだと今は思ってる。
だから、彼とは別れる。新しい愛を探そうと思ってる。」
「さんらしい答えですね。」
「ありがとう。」
「私も、貴方の力になりますよ。」
「えへへ、ありがとう!」
と柳生は互いに微笑んだ。
それから二人が付き合うようになるのは
もうしばらく、先のこと。
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初めての柳生。
ものすごい紳士振りです(笑)
色んな愛を感じてこそ、
初めて真実を発見すると思ってます。
[07/09/07 piyo]
[08/12/29 修正]