※真田の出番は少ないです。真田は高二、は高一の設定です。
いつものように朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて。
制服を着て、学校に向って、授業を受けて。
部活をして、家に帰って、夕食を食べて。
お風呂に入って、歯磨きをして、パジャマを着て、おやすみなさい。
当たり前のことなのに、いつもと同じ変わらないことなのに、
なにかが、足りない。そんな気がした。
メランコリック少女
「行ってきます!」
は家の中にいる家族に向って叫んだ。時刻はもう七時。
普通、学校で授業を受けるだけであれば、まだまだ余裕の時間だが、は急いでいた。
ドアノブを回して、ドアをあける。今日は温かくなるらしい。
そのことを物語るかのように朝日がの身体を包みこんだ。
「まぶしー…。」
目を細め、太陽を見る。が、やはり眩しすぎたようだ。
はすぐに左手にしていた腕時計に視線を移した。
「ヤバ!あと5分しかない!!」
急いで自転車のサドルに跨ると、はすぐにアスファルトを蹴った。
の家から最寄の駅まで自転車で8分。物凄く急げば5分で着く。
その駅から立海大までは駅が4つほど。30分かそこらで着く。
駅に着き、急いで自転車を止める。鞄から定期を取り出し、改札を通った。
セーフ。電車はまだ来ていないらしい。
はあたりを見回した。見慣れた人物が手を振っている。
「〜!セーフだよ!今日もギリギリだね。」
「お前も、俺より遅いとか。よく遅刻しねえな。」
「うーん、やっぱ起こしてくれる人が居ないと駄目みたい、私(笑)」
はあはは、と笑う。と赤也は一瞬淋しげな顔をした。
しかしすぐに元の顔に戻した。
「そうねえ。これじゃ、自立できないわよ?」
が言う。
「、わかってるよな?遅刻一回につきプリン1個だぜ。」
赤也が言う。
「わかってる!だからこうしてギリギリでも間に合ってるじゃない。あ、電車来た!」
着いた電車に乗り込む。この時間帯、都心部へ向う電車ではないためだろうか。
この電車はあまり混まない。
とは空いている座席を見つけ、そこに腰掛ける。
赤也は二人の前に立ち、吊り革に手をかけた。
そこから約30分。他愛の無い話でとと赤也は盛り上がる。
昨日の授業や小テストの話から、深夜にやっていたバラエティー番組の話。
と赤也は同じテニス部ということもあり、練習試合のことでも、盛り上がっていた。
くだらないが、楽しい時間。授業を受けるよりよっぽど楽しい。
しかし。
ずっと前から、ずっとずっと前から思っていた。何かが足りない、と。
◇
「えー、これから進路希望調査を配布するので各自良く考え明日提出しろ。なお・・・・」
教壇に立つ担任がプリントを配布する。生徒は面倒臭そうにプリントを受け取り、後ろへとまわした。
『もうすぐで進級か』はふと窓の外を見た。
まだ少し風は冷たいが、春ももうすぐ。木木には小さな芽が出ている。
「まだ六か月しか経ってないんだ・・・。」
は呟いた。隣に座る赤也は言う。
「六か月って・・何がだよ。」
「…弦チャンのこと。」
「ああ、そういうこと。・・早えーな、もう六か月か。」
「早くないわよ!まだ半年も残ってるのよ?」
「なんで連絡もくれないのよ・・・。」はまた呟いた。
と真田は生まれながらの幼なじみ。にとって真田は兄のようであり、
父のようであり、大事な大事な好きな人でもあった。
その真田が、いまはアメリカに居る。今から約半年前、
彼はテニス留学をしたのであった。
当時、断固として日本を離れようとしない真田だったが、
先生方の熱心な誘いを了承し、一年間の留学をしたのである。
留学には、より強くなりたい、という真田の想いも入っていた。
勉強は全般に得意な真田は、英語にもさほど困らなかった。
幼なじみのは少し(否、かなり)寂しく思ったが、笑顔で真田を送り出した。
『一年なんてあっというま』、そう自負していたが、16年も一緒にいた真田が
いないとなると物足りないものがあるらしい。
毎日、「会いたい」という気持ちが募っては、
「会えるわけないのに」という憂鬱に変わっていた。
「最近、そのことばっかりでさ。」
「あえなくて淋しい・・ってか?」
「淋しい・・・のかな?日常がつまらないって感じ。」
「じゃああたしがを楽しくさせてあげようか?」
突然後ろから聞こえた声には驚いた。後ろを見れば、が立っている。
なぜ離れた席のが?と赤也は疑問に思い、辺りを見回す。
成る程、学活にも拘らず特にやる事もなく自習となったらしい。
はに言い換えした。
「の顔をみれば十分楽しいから。そんな配慮いらないよ。」
「何それ、失礼ね。今日部活終わったらテニス部の部室来てくれない?」
「え、テニス部に?なんで。」
「今日来たらいいものが見れるぜ?丸井先輩がガムくれるかも。」
「じゃあ行こうかな!(笑)」
は乗せられるように笑った。と赤也は互いに目で合図する。
そして二人もフフッと笑った。
◆
部活が終わり、の言う通りテニス部の部室前へときた。
中では明りこそついているものの、人がいる気配がしない。物音一つ聞こえない。
本当にここで良いんだろうか、入っていいのだろうか、は不安に思いつつ
ドアノブに手をかけた。右にまわす。
―――ガチャ
「誰かいますかー?すみませー・・・」
が言いかけたときだった。
ドアの陰からひょっこりと赤也とが姿を見せた。
「お!来た来た!」と赤也。
「早く!こっち来て!」と。
テーブルの上には小さなケーキが置いてある。
よく見ればあちらこちらにパーティの飾りつけのようなものもある。
何か変だ。何か有るのだろうか。第一、テニス部員ではないが部室にいることも可笑しいのだが。
はと赤也に聞いてみてるが、二人とも「まあいいから」と言うだけだった。
テーブルの真ん中より一つ横の椅子に座るよう促された。
仕方なく、は二人に言われるがままにする。赤也とも座るかと思えば、
二人は再びドアの陰に隠れた。一体なんなのか。
そうこうしているうちにドアの外が騒がしくなる。
はドアを見つめた。部員が来たのだろうか。
そうすれば自分はカナリ気まずい事になるのでは無いか。
部員でもない人物(しかも女)が部室に居るのは拙い筈。
がしかし、考える暇もなく、ドアは開いた。
―――ガチャ
と赤也は同時に手にもっていたクラッカーを鳴らす。
同時に叫んだ。
―――パパーン!
「「おかえりなさーい!真田先輩!!」」
「え?」
「・・む!」
そこにはクラッカーのくずを被った、真田が立っていた。
は驚きのあまり目を点にする。どういうことだ?なぜ真田が?
真田はテニス留学に行ったと聞いていた。一年は帰ってこないはず。
は席を立ち、真田の前に立った。
「弦チャン・・・?なんで?アメリカは?」
「そ、それより何故がここに!?」
「それよりなんで日本にいるの!?」
と真田では埒(らち)があかない。真田の後ろにいた幸村がひょっこり顔を出した。
「真田の留学、半年になったの聞いてなった?」幸村が言う。
「え?知りません!なんでですか?!」
「俺の留学はもともと半年の予定だったが。」真田が答えた。
「一年じゃなかったの・・・?」
「・・う・・・うむ。はじめは一年の予定だったが、
俺には耐え切れないと想って半年に変えてもらったのだ。」
「なんで言ってくれないのよ!」
が真田の胸を叩く。真田は少し困ったように、
また、頬を赤くした。そして帽子を深く被った。
「言い出すタイミングが掴めなくてな・・・・・」
「・・・もう。弦チャンの馬鹿!!!」
は思い切り叫ぶと真田に抱きついた。目頭には大粒の泪があった。
行き成り抱きつかれた真田は頬を更に赤くする。それを見ていた赤也やは
「ヒューウ」と冷やかした。だが、と真田には聞こえていないようだ。
抱きついたままのは、真田にしか聞こえない声で言った。
「弦チャンが居ないと駄目みたい。憂鬱で仕方なかった。
毎日、何かが足りなくて。弦チャンが必要だって思った。」
「・・・。」
「・・・・・・・おかえり。」
は真田の胸に顔を預けた。真田は突然の事に硬直する。
ぎこちなく、の頭を撫でると、小さく、に言った。
「ただいま、。」
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ちょっと長くなってしまった。
大事な人が離れてから
存在の大きさに気付くことって
ありますよね。そんなニュアンスの話。
[07/12/29 piyo]
[08/12/19 修正]