『運命』なんて言葉、何度も使うと安っぽい。

けど、偶然が重なるたびにその言葉を使いたくなるのは、

恋する人間の性質であり、特権でもあると思う。

























「あ、岳人今帰り?」


部活が終わって、玄関で靴を履き替えていたときのこと。

そこに現れたのは、首にマフラーをグルグルに巻いた。

顎どころか鼻くらいまで隠れてやがる。

それなのに声がはっきりと聞こえているのは、

俺がの声に敏感だから

――なんて訳は無い(と思う)。



俺はきょどりながらも返事をする。



「ああ。さっき終わったところ。は?部活終わったのかよ。」

「うん。40分くらい前に。だけどと話していたらこんな時間になっちゃった。」

「お前もも本当話し好きだよな。」



俺はククッと笑う。するとも笑って俺に言った。

しかも指差しながら。



「今の笑い方跡部に似てる!」

「うっせ。クソクソ。」

「それって『うんこうんこ』って言ってるのよ?知ってた?」

「はー。うぜ。俺帰る。」

「あ!ちょっと待って、私も一緒に帰るっ!」








◆








「岳人と帰るのこれで3回連続じゃない?」

「あーよく考えればそうだな。」



嘘。よく考えてなくても俺はわかっている。寧ろ、しっかり気付いている。

一昨日も偶然と玄関で会った。方向が同じというのを良い事に、に

「一緒に帰るか?」なんて言ったら「うん、いいよ。」なんて言われた。

その時の俺の喜びといったらものすごい。顔には出さなかったけれど物凄く嬉しかった。

小四の時にバレンタインに好きな子からチョコ(本命!)を貰った時よりも嬉しかった。



その日は他愛ない話題で盛り上がって、別れ際に「じゃあな。」と言えば

も「明日ね。」と返してくれた。

明日も会える、その言葉が嬉しくてたまらなかった。



そして偶然、昨日も玄関で会い、一緒に帰り、

今日も偶然、昨日と同様に会って、こうして一緒に帰っている状態。

多分俺、一生分の幸せを今使っていると思う。



「凄いね3回とか、ちょっと運命的じゃない?」



が冗談交じりに言った。いや、本気なのか。

どっちにしろ、俺にはの心は読めない。

俺も冗談交じりにに返す。



「だな。俺ら運命の糸で繋がってんのかもよ。」

「なにそれー。岳人が言うとクサイ台詞に聞こえる。」

「うっせ。」



「でも俺は本気だぜ?」

続けて言おうか言うまいか、少し迷った。

だけど、根性無しの俺には流れで告白しちゃう、なんて勇気はなく、

に返した短い言葉は宙に浮かんだままだった。



「あ。私今日コンビニよって帰るからもうここでバイバイするね。」

「あ、おう。…じゃあな。」



次ぎは何の話題をしようか。折角考えていた俺の案はすべて散る。

ぎこちなく振った俺の右手は、すぐに自分のポケットへと引っ込んだ。

の手を振る姿とコンビニに向う後ろ姿を少し眺めて自分の家を目指した。



その時密に決めたこと。俺の中で決めたこと。



もしも明日、4回目となる明日もと帰ることが出来たら、



俺は運命を信じて告白をしようかな、と。
























安っぽくても
運命は運命。
(…いや、やっぱり5回連続にしようかな。)




























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漢らしい岳人を目指したのに。
いつのまにこんな優柔不断な子に…苦笑
ま、そんな岳人も可愛いよね(笑)
土日に街で好きな人に会うと
運命感じちゃいませんか?
[08/01/06 piyo]
[08/12/30 修正]