目を空けたら、扉があった。




真っ暗で、床も壁も分からないのに、その扉だけが光っていた。

ドアの材質も固さも分からない。取っ手さえ見つからない。

分かるのは、ただ大きいと言うこと。

黒い空間にはやけに不釣合い。



ドアの隙間から光が漏れるように射している。

扉を開けたらどうなるのだろう。好奇心が全身を巡る。



その向こうにあるものは、花畑?田舎の風景?都会のビル?それとも・・・。






















------ザアアアアア




「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・っ」




どうしてだよ。どうしてなんだよ!昨日会ったばっかりじゃねえか!

なんで、なんで寄りによってなんだ!?





昨日は晴れていた。快晴だった。ところが打って変わって今日は雨。強雨だ。

岳人は必死に走っていた。傘も差さずに、無我夢中で。

スニーカーで地面を蹴るたびに水が跳ねる。

だが、岳人の全身は雨によって既にずぶぬれである。


そんなことは構わず、岳人は走っている。目的地は一つ。

の元------病院。









事件は数時間前に起きた。



今日は雨のため、筋トレ中心の部活。

岳人は着替え終わった後、不意に携帯を開いた。


不在着信4件。メール1件。


岳人の脳内に不吉な予感が走る。

恐る恐るメールを開いた岳人は、一瞬にして全身の力が抜けた。






  【が事故にあった。都立病院に搬送された。】







ガシャン







携帯を落とした岳人に忍足が声を掛ける。



「どないした?」  「・・・・・・」



反応が無い。不審に思った忍足が岳人の携帯を拾う。

忍足は画面を見た。



「・・・っ!岳人!はよ病院行き!!」










岳人は忍足が言うのと同時に部室のドアを開けた。

雨は岳人の心のようだった。黒い雲が重い水を激しく叩きつけるように落としている。

岳人は負けじと走った。


雨なんかつらくない。辛いのはだ。が居なくなるのは-----俺が辛いこと。







昨日会ったばっかりだろ?一緒に帰ったじゃねえか。


真っ赤な顔して俺の手握ってただろ。真っ直ぐな瞳で俺の目を見てただろ。

くだらないこと話して笑っていただろ。俺の言葉に頷いていただろ。




「寒いねー、岳人。」

「ああ、だから冬は嫌だ。」

「えー、あたしは冬が好き。」

「だって、部活は筋トレばっかなんだぜ?しかも寒いし。」

「でも、クリスマスとか、バレンタインとか、色々行事もあるんだよ。嬉しいじゃん。」

「知ってるか?

 バレンタインは某お菓子会社の売上伸ばす為の作戦なんだぜ?」

「知ってるー。てか、それ教えたのあたしじゃん!」

「・・・そうだっけ?」

「そうですー。もう、岳人の馬鹿。」

「う、うるせえ。」







そう言うと、は俺の手をぎゅっと握っただろ?そして俺は握り返した。

の手は温かかくて、冷え切った俺の手を温めてくれた。




「・・・っ、どうしてだよ!!!」




病院のドアが開くと同時にナースセンターに行く。

ビショビショの俺は明らかに病院の清潔な雰囲気には浮いていて、

でもそんな事はどうでもいい。看護師さんが驚いた目で見ても気にない。

聞きたいのは、の部屋番号-----の声。



「じ・・事故にあったってどこの部屋ですか!?」


















病室に足を踏み入れる---------が、いた。




分けの分からない機具を全身につけられて苦しそうに寝ている。

どの機具がどんな効果を果たすのかは分からない。

ただ俺にわかるのは、は辛うじて生きている、ということ。





近くにいた家族の人に軽く礼をして、のお母さんに「座りなさい」と勧められる。



会話は無い。静かな病室に時計の針の音だけが響く。























「岳人くん、私たちロビーで少し休んでくるわね。岳人くんも休みなさいね。」


の家族が病室を出てくる。

俺が今にも泣きそうだったからか、一人にしてくれたのか。

の家族の優しさが、俺の中にあったストッパーを緩めた。

涙腺が緩む。今まで溜めていた涙が一気に溢れる。




時計の音と俺の鳴き声が室内に響く。




「・・・・・・行くなよ、・・・帰って来いよ・・!!!・・・」
































「・・・・・・行くなよ、・・・帰って来いよ・・!!!・・・」




ドアに触ろうとした瞬間、誰かの声が聞こえた。

聞き覚えのある声。大切な人の声。落ち着く声。でも、悲しそうな声。







ソレハ誰ノ声?







「まだ、お別れだなんていうなよ!」







また聞こえた。誰の声?

後ろを振り返る。

やっぱり何もない。

再びドアを触ろうとした。








「・・・行くなーーーー!!!」























































目を空けたら、真っ白い天井あった。ボーっとする。

でも、手は温かい。優しい愛しい温かさ。

視界の端に特徴のある髪の色が見えた。




「・・っ!!」




突然叫んだのは紛れも無く、大好きな人、大切な人、愛しい人-----岳人。




「・・・・ん・・」



体を起こそうとする。駄目だ。何かに繋がれていて起きれない。



「っ・・おい、無理するなって。意識は大丈夫か?」

「・・・うん。」

「・・・・・よかった。本当よかった・・・!!」





ゆっくり岳人の顔を見れば頬には一筋の涙がながれていた。

初めて見る、君の涙。まさかこんなところで見るだなんて。





「が…くと、ない…て…る?」

「な、泣いてねえよ。雨で濡れただけ。」

「…なき…む…しだ…ね。」

「だから泣いてない!雨で-----」

「が…くと」

「・・・ん?」









「あり…が…とう。だ…いす…き。」









の頬には俺とお揃い、一筋の涙。








「お前も泣き虫だな。」

「がく…と…もね。」

「そうだな。」







泣き虫でもなんでもいい。君の側に居れれば、それで。


















泣き虫ボーイ




































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事故にあったヒロイン。
それが絆を強めたのです。
この作品はは題名から入ったのに、
すんなりかけたという不思議な作品です。
[07/01/29 piyo]
[08/12/29 修正]