別れは出会いを運ぶ。
そんなこと誰が言ったのか。
別れるくらいなら、出会わないほうが良いに決まってる。
出会うことで、別れ際に出来た隔たりなど補えるはずが無いのだから。
過酷な受験戦争を乗り越え、開いた新たな道。
かといって、希望に満ちている分けでは無く、寧ろ逆で、心は空虚感でいっぱい。
窓の外に映る空は真っ青で、雲も真っ白だけれど、対して感動するわけでもない。
(あー、学校面倒。)
今の私の心はドス黒くて、何に対しても無関心。
それもこれも、卒業なんていう「別れ」があるせいだ。
卒業なんて無ければ、今頃は……。
「アンタ、どこ中からきたの?」
機嫌最悪な私に話し掛けた勇気あるものは一体誰?
考え中なのに、邪魔をする無神経なヤツは誰?
声の主を見る。---私の隣の席のもじゃもじゃした頭の男の子。
私を目が合うとそいつはニシッと笑った。ちょっと癖のある、意地悪そうな笑い。
「あなた誰ですか?」
この言葉はまだ良い方だ。機嫌の悪い私が敬語を使うなんてゼロに等しい。
今使ったのは、多分、気まぐれ。または、直感的にこの男の度胸が気に入ったから。
「俺の質問が先。アンタどこ中?」
前件撤回。気に入った、なんて撤回。
まずは自己紹介からでしょ?それなのに『俺の質問が先』ってどういうこと?
(ムカツクヤツ)
軽くその男を睨むと、やつは物ともせず、ヘヘッと笑い返してきた。
なんだ、可愛い笑いも出来るんじゃん。なんて。
「…横浜の公立中学校。」
「へえ。どうりで見かけない顔だと思った。」
「アナタは?」
「へっ?俺?俺はそのまま中等部からも持ち上がりで…」
「そうじゃなくて。名前。」
誰もアナタの経歴なんて聞いてない、と言いそうになったけれど、そこは我慢。
私が言うと、こいつは「あっ、そういうことね」なんて言ってまた笑った。
ヘヘッ、と照れ笑いを。
ちょっとだけ、可愛いなんて思ってしまった。
「俺は噂のエース切原赤也!っつても、
高校じゃまだレギュラーじゃないけど。あっ、テニス部だからな。」
「切原ね。」
「アンタは?」
「。これからよろしく。」
適当ににこっと笑って、視線をそらす。切原は「…おぅ!」と返事をした。
空も雲もさっきと変わらず、真っ青で、真っ白で、おまけに太陽も燦燦と輝いている。
なのに、私の心はどこかつまっていて、スッキリしなくて。
あー、気分と天気が一致しないとこんなにムシャクシャするんだ、なんて。
ガタッと前の椅子が動いた。
そこに対面する形で座っているのは切原。もう話し終わったはず。(というか、一方的に切ったんだけれど)
正面から見た顔は結構綺麗で、きっともてるんだろうな、とも思う。
「なあ、初対面で失礼だけどさ、」
「何?」
「アンタ、そんな顔してると友達出来ないよ。」
「……は?」
何を言い出すんだ、こいつ。って思ったけれど、確かにそうだ。
この教室に入ってから一度も誰とも話してないし(切原は別で)、笑ってない。(いや、愛想笑いはしたかも)
「アンタ、最近嫌な事あったんでしょ。」
「なんでそう思うの。ちなみにアンタじゃなくて。」
「顔に書いてる。例えば--------振られたとか。」
図星。どうしてこんなに勘が良いのだろう、こいつは。しかもさり気無く私の言葉をスルーしやがって。
確かに、私は一週間前に振られたばっかり。
彼氏とは1年以上付き合っていた。『ずっと一緒だよ』なんて甘い言葉も囁きあって、
友達にも『いつか結婚するんじゃない?』なんて冗談も言われて。
なのに、行き成り別れを切り出すなんて、思ってもみなかった。
高校が違うだけで、『付き合う自信が無い』なんて。
ずっと、一緒だと思ってたのに。
だから卒業なんて嫌なんだ。
「はあ」と一つ、溜息をつく。
私がボーっとしていると、切原がまた話し掛けてきた。
「あー…図星だった?悪いな。俺、他人の恋愛に関しては勘が良くって。」
「…そりゃあ、すごいね。ビンゴだよ。」
俯き加減に私が言うと、切原は一発デコピンをしてきた。
パシィイン、と、いい音がした。こいつの特技はデコピンに違いない。
「まあ、恋愛なんてまた出来るって。
オトコだって星の数ほどいるんだぜ?そのうち巡り会うって、運命の人に。」
「励ましてくれてるの?それ。」
「あたり前。」
切原はニカッと笑って席を立つ。
また一瞬、胸が高鳴った。
「どこ行くの。」
「ちょっと先輩のところまで。あっ、ペンと紙ある?」
何に使うのか、とりあえずふでばこからボールペンとメモ帳を切り、切原に渡す。
切原は私に見せないようにコソコソと何かを書き始めた。先輩への手紙だろうか。
書き終えた切原は満足げに笑って、メモ帳を四つ折りにした。
「じゃー、あとでなっ。」
(行っちゃった…。つまらないの。)
ふと机の右上を見るとさっき切原が持っていた四つ折のメモ帳。
ご丁寧に“失恋で傷ついてるへ”とまで書いてある。完璧からかってる。一種の果し状か?
メモ帳をあける。
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男の気持ちは男に聞け。
恋の相談受けてやるよ。
090-98○○-75○○
tenisu.makene-@xxzys.ne.jp
切原 赤也
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一瞬、さっきの満足げな切原の顔が浮かんだ。
(そういうこと。)
ちょっとだけ、嬉しくなった。早く切原に会って言いたい。ありがとう、と。
そして、また笑顔を見せて欲しい、なんて思う。
失恋の傷は新たな恋で忘れるのが一番なのか。私の傷は大分癒された。
別れは、出会いを運ぶのかもしれない。
新たな恋の予感がした。
世界一の
笑顔をもつ貴方に、
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進学・進級おめでとうございます。
別れは悲しいですが、その後には出会いが待つものですよ。
新たな道を切り開きましょう!!!
[07/03/31 piyo]
[08/12/19 修正]