こんなにも 好きなのに

捕まえようとしても逃げていく

翼を広げて、大空へと駈け出す

そして何処かへ行ってしまう




















「今日ね、仁王先輩と目が合ったんだよ!」



花が飛び交うくらいの笑顔でそう言った女、



「そーかよ、よかったな」

「ちょっと、赤也。大きな進展に一緒に喜んでよ!」

「はいはい、おめでとー」

「だから、反応が冷たすぎだって」



そう言って、は自分の席に座る。

ニコニコと、この上ないくらいの笑顔である。



は恋をしている、詐欺師 仁王雅治に。

そんなを冷たい目で見る少年、切原赤也。



 



(なんで、俺じゃないんだよ)







―― 俺は、が好きだ、誰にも負けないくらい。

   それなのに、こいつは仁王先輩のことが好き。

   最初、それを聞いたときはショックだった。

   けれど、のことだからすぐにあきらめるだろうと思ってた。



否、その考えは甘かった。



いつもは3日で飽きるが2週間以上、

仁王先輩の話題を出してくるからおかしいと思った。

だから、さり気無く聞いてみた。

今思えば、聞かなきゃよかった。






「なぁ、お前仁王先輩に惚れてるの?」

「え?!・・・・・うん」

「止めとけって、仁王先輩なんか」

「うるさい!あたしの好きな人の悪口言わないで!」






その時のの顔は【恋する女の子】の顔だった。

俺には決して見せない、女の顔。





―――-すごく、悔しい













*













「付き・・・合・・う・?」

「うん!一昨日から!」




月曜日、登校して来た俺に掛けられた第一声は一番聞きたくない言葉だった。




『赤也、聞いて!あたし、仁王先輩と付き合うことになったんだ!』




朝練を終えた俺が教室に入った途端、に言われた。

は?仁王先輩何にも言って無かったけど・・・。




俺は、 そうか としか言えなかった。

その後、が俺の態度に対してグチグチ言っていたが、

そんなのは気にしていられなかった。









*








その後の授業も気が入らなかった。(でもサボらなかった俺は偉いと思う)

授業中斜め前のとも何度か目があったが、気がつかない振りをした。


その後も話し掛けられないように休み時間のたびに他の教室に行ったり、トイレに行ったり、

友達に「切原、お前トイレ行きすぎ」と言われても「漏らすよりましだろ」と言って軽く流した。



今は、を見たくない、と話したくない、なのに








今、俺の前にはが居る。









現在18時30分 一般生徒はとっくに下校している。

では、なぜが居るのか、答えは簡単

仁王先輩と帰る為。




では、何故俺が教室に居るのか、答えは1つ

英語の補習

といってもプリントを3枚終わらせれば良いのだけれども、これが中々難しい。

俺が四苦八苦している時、こいつが図書室から追い出されてココ(教室)に来た訳。




話せば話すほど、『好き』の気持ちが大きくなる。

だから、話したくなかった。なのに、何故お前は―――…





「あーかーや!何?英語やってんの?解る??」

「・・・・ああ、大丈夫」

「とか言って、全然進んで無いじゃん。教えてあげよっか?」

「・・・・いや、良い」

「このままだと、部活行けないよ?ちゃんに任せなさいってぇ(笑」

「いや、大丈夫、自分でやるから」




そう…じゃぁ見てるね  そう言って、は俺の前に座った。




俺は、黙々とプリントに取り組んだ(といっても殆ど解らない)

暫し沈黙があったが、が、口を開いた。






「赤也さ、変じゃない?」





ドキッとした、やっぱ気付いてたか・・・・





「・・・あ?別に何もねぇけど」

「いや、絶対変。何か遭ったの?」

「それはお前が仁王先輩と付き合い始めたからだよ」


なんて言える筈も無く、


「別に」


ただ、それだけ答えた。







「わかった!あたしと仁王先輩が付き合うのが羨ましいんでしょ!

 へへ〜ん、なら赤也も彼女作ってみなさいよ!

 まっ、うち等以上にラブラブにはならないでしょうけどっ(笑」




きっと、には悪気は無かったんだと思う。

いつもの俺なら軽く流したり、言い合ったりするのだけれど、

だから、もいつもの反応を期待したんだと思う。

けれど、今の俺は『いつもの俺』じゃない。

俺の口からはとんでもない言葉が出た。















「うぜぇ」




















赤也はの椅子の前に立ち、の襟元を掴んだ。

瞳は潤んで、興奮しているのか泣いているのか、目は赤く染まっている。

今まで溜まっていた鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、言った。








「俺はお前が好きなんだよ!お前が仁王先輩を思う以上に好きなんだ!

 なのに、なんでお前は気がつかないんだよ、なんで仁王先輩を選ぶんだよ!

 俺の気持ち解るか?毎日毎日、お前の惚気聞かされて、

 俺は毎日毎日、悔しくて、辛くて、哀しくて、淋しくて、 

 お前が仁王先輩を知る前から、俺はお前が好きだったのに、大好きだったのに!

 どうして、お前はそんな笑って俺の前にいるんだよ!

 これ以上話すと・・・・狂いそうなんだよ・・・お前を壊してしまいそうなんだよ、

 俺は・・・お前のことが好きすぎて・・自分が・・・自分じゃなくなりそうで

 それなのに、お前は仁王先輩のことばっかり言っていて

 俺は・・なん・で・・。

 お前の・・笑顔が・・・・余計に俺の心を・・痛める・・・んだよ!」













ハッとした時には遅かった。

俺の目頭から一筋の涙流れた。

はどうしたらいいのか困っている。



女の前で泣いて、女を困らせて、

俺は最悪で最低な男だ。






コツン







一瞬だけど、廊下から足音が聞こえた。

外はもう夜一色で部活も何時の間にか終了時間になっていた。








「仁王先輩、来たみたいだぜ。仲良く帰れよ。」









俺はに言った。




「・・・・・ありがとう」




俺の告白に対してか、今の言葉に対してか、は小さな声で言った。

そして教室を後にした。


























静まる教室に居るのは俺独り。







君は鳥
(飛び立つ貴女は、悲しいほど美しい)






















:::::::::::::::::::::::::::::::::::
赤也、初悲恋です。
長い文になってごめんなさい。
赤也は実は主人公が好きなのに
なかなか言えない。
だけど、主人公は赤也を友達としか思っていない。
恋愛は複雑なんです。
[06/10/01 piyo]
[08/12/28 修正]