365日
360度
君を見ていたい。





午前6時30分。街もまだ静かでこれから動き出す頃

俺は慌てて家を出て、必死で自転車をこぎはじめた。

立海大まで自転車で40分。結構遠い。

7時丁度から始まる朝練に間に合うためには

いつも通りのんびりこいでいては間に合わない。



(昨日のゲームのしすぎだな。くそ。)



昨夜は買ったばかりのゲームに時間を費やしてしまった。

結局ろくな睡眠時間もとれず、朝になって日光を浴びても

まだ眠い。ただ、遅刻したら真田副部長の鉄拳が待っている。


(ゲ…それだけはマジ勘弁!)


怖い副部長の顔を思い出し、少しだけ目が冷めた。(副部長ありがとう!)

よっしゃ、リズムを上げてこぐぜ!(なんか神尾みたいな台詞だ)

なんて思いながら速度を上げ始めた矢先-----信号に捕まった。


「くそっ!」


しかもよりによって待ち時間の長いことで有名な信号。

あー遅い、青になるのが遅い!とイライラしながら

ハンドルを握り締める。その時、せかせかしている俺の隣に

キキッとブレーキの金属音が響いた。

「あー!もう!」という不満の声が聞こえた。

チラリと自分の右横を見ると、同じ立海大の制服を着た

女子生徒が自転車に跨ってまだかまだかと信号を待っていた。

どうやら彼女も仲間らしい。でっかい重そうなスポーツバックを

肩から背負ってブレーキを握り締めている。

きっちりとポニーテールにしばって、凛としたその横顔に

俺としたことが見とれてしまった。(言っとくけど俺は一目惚れとかはしない性質)

決して美人ではないけれど、オーラが清楚で美しい。



もうすぐ信号が変わる。

青になった。



俺はアスファルトを蹴る。隣に居た女子生徒は俺が自転車を動かす前に

さっさと行ってしまった。彼女を追うように俺もペダルをこいで学校へ向う。


(てか、どこかでみたことがあるような気がするんだよな。)


3メートル手前のポニーテールの彼女の背中を見ながら俺は思った。

1学年10クラスもある立海大では同学年であろうと、

毎日初めて見る顔だらけ。だが、こんな印象的な女見てたら

頭のどっかで記憶しているはずだ。


(あー誰だろう…。)


どっかで見た記憶があるんだけどなあ、と思考を廻らしてみたが

結局わからない、という答えに落ち着いた。


モヤモヤした気持ちのままテニスコートにつき、朝練を始める。

3分遅刻したが、副部長の鉄拳はなんとか免れた。











モヤモヤが晴れたのは朝練が終わった直後だった。

体育館の横にある水道で丸井先輩と水を飲んでいた時だ。

「あ、丸井じゃん」という声とともに体育館の出入り口から顔を出したのは

朝のポニーテールの女子生徒だった。先輩が女子生徒に話し掛ける。



「あ、じゃん。お前も朝練?」

「うん、今日から特訓。」

「バスケ部試合近いんだっけ。」

「練習試合だけどね。今年は気合入ってるの。」



じゃあね、と爽やかに汗を光らせながらという女性は去ってゆく。





(…ああ、思い出した。)


あの人、丸井先輩の好きな人だった人だ。

クラスメイトで告白して振られてまたクラスメイトに戻った…はず。


(ふーん、なるほど。)


今の一瞬をみて丸井先輩が彼女を好きだった理由が分った気がした。

一切自分を飾らない、真っ直ぐな女性。

確かに、自分達を取り巻くきゃぴきゃぴした女子とは違う。




(あ、やばい。変な気持ち。)




明日の朝も、会えるだろうか。と、無駄な期待をしてしまう。

もっと知りたくなった。彼女の事を。

俺の知らない姿を知りたい。クラスでの顔。部活での顔。

自転車に乗る後ろ姿ではなく、信号待ちの一瞬の横顔ではなく

全ての角度からみた彼女のことを知りたくなった。





(あー!)




俺はぬるくてまずい水道水をがぶ飲みした。

鉄くさい臭いが鼻に染みた。










































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三角関係というわけではないです。
ただ、誰かの好きな人に惹かれることも
きっとあるだろうな、と思うんです。
[09/02/18 piyo]