生意気で、負けず嫌いで、自分勝手で、
そのくせ
甘えん坊で、かっこよくて、屈託なく笑うの。
余裕の笑顔
「ねえ先輩、そろそろ俺等付き合いません?」
「あ、真田!そこに置いてある部誌取って……サンキュ。」
「俺的に、俺と先輩って最高の相性だと思うんスよ。」
「そうだブンちゃん!ちゃんとガムのごみ捨ててよね。昨日落ちてたよ!」
「俺誓います!先輩を絶対幸せにするっス!」
「ねえ柳、明日のメニューって・・・・。」
「もお!先輩聞いてるんスか!?」
赤也はバンッと机を叩いて私を見る。
その音の大きさに思わず驚く。部誌の上を走っていたペンが動きを止めた。
部室で(女の子の私の目の前で)着替えていたレギュラーも一斉に赤也を見る。
同様に私も赤也を見た。彼の目は少し(充血はしていないが)潤んでいて、
チワワとかパピヨンとかそういう可愛い子犬を連想させた。
その表情がいかんせん可愛いもので、私は思わずクスッと笑った。
「…何で笑うんスか?」
案の定赤也は不機嫌になる。意味も解からなく微笑されたのだから
そりゃ悔しいに決まっている。でも、その不機嫌な様子さえも
可愛く愛しく感じでしまう私。だって弟みたいで可愛いんだもの。
「、赤也を余りからかうな。」
柳が赤也の横に姿を現すと、彼の頭をポンと撫でた。
赤也は隣の柳の顔を見ると、「柳先輩〜」と業とらしい演技で縋(すが)り付く。
まるで親子みたいなその光景を見て、再び微笑した。
「ごめんごめん。ちゃんと聞いてるよ。」
「嘘。だって完璧シカトしてたでしょ。」
「してないって。ちゃんと聞いてる。」
「じゃあ俺何て言ったか言って下さいよ。」
「えーと…『先輩にケーキ奢りたい!』だっけ?」
「はあ、もういいっス。」
赤也は呆れたように自分のロッカーを開いて着替えを始めた。
「やーい、また振られてやんの」「勝負はこれからッス!」
ブンちゃんと赤也のやりとりが聞こえる。
「は赤也をからかい過ぎだ。」
柳は椅子と引いて私の隣に座り、周りに聞こえるか聞こえないかの
小さな声で言った。
「だって可愛いんだもん。赤也の反応。」
「もSだな。」
「あら、恋人に対してはMよ?」
「フッ、それは貴重なデータだ。」
柳は微笑すると部誌を指して間違いを指摘した。
序でに今日の気温と湿度を教えてくれた。
「そういや、再来週テストだよなあ。」
後ろでブンちゃんが思い出し、嘆くように言う。それに同調するように
レギュラーの面々が口々にテストの話題をした。
「俺、赤也はまた英語赤点だと思うぜ。」
ブンちゃんは赤也を見て、言う。
「赤也の赤点の確率は8割を超えているからな。
今回は範囲も広いだろうし赤点は間違いないだろう。」
「丸井先輩に柳先輩まで、酷くないっスか?」
「赤也って英語の最高点何点なの?」
「………42点っス。」
私の質問の後、多少の沈黙を経て赤也が小さく言う。
その後何かを見つけたかのように「あ」と声を漏らすと目を見開いて言った。
「あー!てか柳先輩!なんで先輩の隣に座ってるんスか!!
そこは俺の場所っス!!」
なんだ、そんなこと?と言いたくなるが、実に赤也らしいとも思えた。
嫉妬深いというか独占欲が強いというか。
柳はそんな赤也の言葉をピシャッと遮った。
「何を言っている赤也。はお前の物では無いだろう。」
「うっ…これから俺の物になるっス。…多分。」
「多分って何よ、赤也。」
「それにの隣に座っていいのは赤点をとらない人間だ。」
「そんなルール聞いた事無いっス!」
「に馬鹿が移ったら困るだろう。まあ、英語で平均点以上を取ったら
もきっとOKをするだろうがな。なあ、?」
「え?あ…うん。」
行き成り話を振られ、勢いでOKを出してしまった。
が、赤也の目はとても輝いている。
気のせいだろうか、後ろにしっぽが見える気がする。
「俺がイイ点とったら先輩俺と付き合ってくれますか!?」
さり気無く私の手を握ると念押しする。
ごつごつした赤也の手が妙に嬉し恥ずかしくて顔を直視できない。
目線を逸らして私は返事をする。
「いい…よ。その代わり平均点以上じゃなくて80点以上ね。」
「げ・・・。」
げ、という顔をする赤也を見てやっぱりこの人が愛しいと思った。
ラインを上げたのは意地悪ではない、私の愛のムチ。
■
彼の頑張りは物凄かった。
付き合いを賭けたテストに向けて、赤也は英語ばっかりを勉強しているらしい。
それは部活全体の噂になっていたが、昨日、部活後に部室で
幸村と柳を教師に向え勉強している赤也を見ると、本気なんだなと実感した。
テスト一週間前になり、部活が停止になっても
放課後図書室で勉強している赤也を見るといままで赤也をからかっていた
自分が、情けなく思えた。
彼はいつも笑っているけれど、もしかしたら傷付いていたのかも知れない。
彼の気持ちを無碍にしてはいけない。いや、したくない。
「座っていい?」
キィ、と図書室のドアを開ける。
鞄から筆入れと勉強道具を取り出し、赤也に話し掛けると彼を視線を
ノートから私に移した。彼は目を大きくあけて驚く。
「先輩!」
「しっ。ここ図書室だよ?」
「あ、すみません。…なんで居るんスか?」
「ん?勉強するために決まってるでしょ。で、調子はどう?」
「そりゃもちろん余裕っスよ。」
ニカッと笑う。その笑顔はいつもと変わりなくて、
ちょっと安心した。無理はしていなようだ。
「頑張ってね。」
私がそういうと、赤也は照れたように「…っス」といい、顔を伏せた。
□
「あー!やっぱ久しぶりのテニスは最高だな!」
そう声を挙げたのはブンちゃん。ぐぐっと背伸びをするとジャッカルと共に
コートへと向かっていった。私は隣にいた柳に話し掛ける。
「ブンちゃんご機嫌だね。」
「なんでも国語で91点をとったらしい。」
「ふーん…。」
「フッ、は今赤也の点数が気になっているだろう。」
「そ、そんなこと………あるかも。」
ズバリと言い当てられて私は少し動揺する。
柳は意味深く笑うと部室を出て行った。
それと入れ替わりに遠くから誰かが走ってくる姿が見える。
黒い髪と覚えのある背丈、背格好。
間違えない、アレは赤也だ。そう思った瞬間自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「先輩!!」
「あ、赤也!?うわっ!」
重たいはずのテニスバックを背負っているはずなのに赤也の足取りは軽く、
いつの間にか私の元に来る。
そして勢い良く私に抱きついた。思わずの出来事に身体が倒れかけそうになった。
赤也は両手で私の両腕を掴むと、向き合うようにして笑顔を作った。
「俺の点数知りたいっスか?」
「…30点とか?」
「そんな点だったら俺もっと凹んでますって。」
「じゃあ何点?」
そう聞くと赤也はニヤリと微笑む。
聞いて驚け、というような顔を作って私を見た。
「奇跡の80点っス!」
同時に、また私を抱きしめた。
赤也に抱きしめられたまま、私は赤也に話し掛ける。
「は、80点!?凄いじゃん!」
「でしょ、俺相当頑張ったんスよ!」
「偉い偉い、よく頑張った。」
手をまわして赤也の頭を撫でる。赤也の髪が時々顔を掠めて
くすぐったいけれど、その心地さえも愛しく感じた。
「テスト難しかった?」
「ぜーんぜん。勉強してから余裕っス。」
「先輩、」
「ん?」
赤也は小さく呟く。
「先輩の隣は俺のものっス…よね?」
「……それは」
こくりと首を縦に振る。彼はクシャッと顔を歪めて笑うと小さく囁いた。
「ヘヘッ。先輩大好き!」
余裕の笑顔の赤也とは正反対。
あまりのストレートな言葉に私はただ、ただ、
頬を赤めるだけだった。
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捻くれた愛情表現をするちゃんと
真直ぐな愛情表現をする赤也くん。
そんな関係二人が好きです(笑)
[08/03/15 piyo]
[08/12/18 修正]