ポストマン 「郵便です。」 のもとに届いたのは、一通の白い封筒。そう、真っ白なのだ。 小花柄や愛らしいキャラクター、あるいはストライプやドット柄など 一切の装飾はなく、ただの紙とも袋とも言える白色の手紙。 は“様”と筆文字で(それもかなり達筆に)書かれた表面を見、 ゆっくりと裏返して裏面に書かれた送り主を見た。 その名を見て、思わず笑みがこぼれる。 “真田弦一郎” * ------ 様 厳しい寒さの続く中、いかがお過ごしでしょうか。 が大阪へ転校して早半年。そちらでの生活には慣れただろうか。 否、の事だから元気でやっていると思っている。 俺達テニス部は次の大会で全勝するべく、日々鍛えているところだ。 部員も皆、やる気満々のようで素晴らしいことに一週間連続欠席者なしだ。 もっとも、幸村の圧力が凄いのだが・・・まあ、そんなことは置いておこう。 最近、神奈川では気温の変化が激しい毎日が続いている。 天気も安定せず、恥ずかしい事ながら俺も風邪気味だ。 大阪の気候や天候はわからぬが、も風邪をひかぬよう気をつけろ。 長くなったが、ここで終わりとする。 真田弦一郎より 追記;急に手紙を出したのは幸村の薦めだ。 女の子は手紙を貰うと嬉しいと聞いたのだが…もそうなのか? ------ ■ 「律儀な彼氏やなあ。」 蔵ノ介は机の上に置いてあったポッキーの袋を開けると一本口へ運んだ。 「ちゃんも食うか?」 「いや、いい。」 はポッキーを断り、手紙にジッと視線を落とす。 もう一度、その文面を読み返した。 自然と気分が和んだ。何度見ても嬉しくなる、優しくなる。 顔が綻(ほこ)んでいるのが自分でもよくわかる。 「なんやえらい嬉しそうやん。」 「だって嬉しいんだもん。」 「ほんま、ようできた彼氏サンやな。」 蔵ノ介はの机の上を見た。幾つかの封筒が置いてある。 全てが白く無地のもの。至ってシンプルだ。どうやらの手元にあるのも同じ様。 手紙を読み返したが蔵ノ介に言った。 「どう?私の彼氏。」 「まさかあの真田だとは思わへんかった。しかも相当らぶらぶなようで。」 「まあね。」 は自慢げに蔵ノ介に言葉を返した。 そして今朝来た手紙を取り出し、丁寧に封を開けた。 それを見た蔵ノ介は微笑して言う。ついでにポッキーをもう一本頬張った。 「その手紙も真田クンから?」 「そう。3日前に返事書いたばっかりなのに。」 は苦笑した。だが、その笑顔は幸せそうだ。 急に、真田から手紙が来てから1ヶ月。 と真田の手紙交換は絶え間なく続いていた。 初めて遠距離恋愛中の真田から手紙が来た時、はすぐに返事を書いた。 普段からメールや電話も出来るが、手紙には手紙で返したい。 そんな気持ちから心をこめて返事を書いたであった。 手紙をポストに入れてから5日後。直ぐに真田からの返事が来た。 部活や勉強で忙しいはずなのにどこで手紙を書く時間があるのか、 は疑問に思いつつあるが、嬉しいことに変わりは無い。 そして返事を返す。 こういったやりとりがずっと続いている。 「マメなんやな。俺には無理やわ。」 「弦一郎だから出来るのよ。本人も結構楽しいみたい。」 は届いた手紙を読み終えると早速返事を書くべく カバンからレターセットを取り出した。用意周到である。 ポツリ、とが言葉を発した。 「今じゃね、」 「ん。」 「今じゃ郵便配達員を見るだけで嬉しくなるんだ。 もしかしたらカバンの中に弦一郎の手紙が入ってるかも、って。」 えへへ、とが惚気た。 そしてペンを走らせる。 「えっと、真田弦一郎様・・・っと。」 その笑みを幸せを全てを手紙にこめて。 真田の出番なし・・・(苦笑)