DEAR



付き合って半年になる彼女とは未だにデートもしたことがなく、

はたまた一緒に帰るなんてこともなく、ただ毎日

メールだとか電話だとかのやりとりをするだけであった。

それでもまあ俺は気にせず、中学生の付き合いってそんなもんじゃん?とか思っていて

それを忍足に話したら奴は馬鹿にしたように


「阿呆ちゃう?俺なんかキスはもうとっくに終わったで。」


と言われた挙句、ご自慢の彼女との惚気話までもされた。

ああ、こいつの相談した俺が馬鹿だった。後悔するにも、

経験的には奴の方が圧倒的に(そりゃもうものすごく)上なわけで

右も左も分からない俺はこいつに相談するしかない。




「ちゃんも何も言うてこうへんの?」


「言うも何も、『テニス部は忙しいから仕方ないでしょ。』が口癖だぜ?

 まあ有る意味割り切ってるっつーか、理解してるっつーか。」


「確かに俺ら休みないもんなあ。ろくにデートも出来へんし。」


「お前も彼女とデートできてないだろ?」




俺は鞄から出したスポーツドリンクをググッと飲んだ。そして忍足を見る。

奴はキョトンとした顔をして俺を見ていた。そしてまたククッと笑う。

この笑いはどうも俺にとって、馬鹿にされているようにしか見えない。




「昨日したでデ・エ・ト。」


「昨日って…平日だろ?しかも部活終わったの8時だぜ?」




忍足は眼鏡を取り制服の布で少し拭くとまた掛けなおした。

あー、こいつのひとつひとつの動作が妙に様になってるのが腹立たしい。




「彼女年上やからな。近くのファミレスでバイトしてんねん。

 で、上がる時間と俺の部活終わる時間が被ったからそのままデートしたわけ。

 まあ、デートつうても公園で話しただけやけどな。」


「いーよな。そういうの。」




俺は手に持っていたスポーツドリンクを鞄に入れ、鞄の奥深くに入っていた携帯を

取り出した。メールが二件。開いてみたらどちらもメールマガジンで俺はすぐに削除した。

忍足の話を聞いたら、無性にに会いたくなって、メールをして見ようかと思った。

けれど、そんなことでに迷惑をかけるのはなんつーか申し訳ない。

ほら、もし勉強中とか料理中(てのは無いと思うけど)とかだったら邪魔しちゃ悪いじゃん?



やっぱ止めよう。携帯を鞄に仕舞おうとする。と、見慣れない紙切れが入ってることに気付いた。

俺はそっとそれに手を伸ばし、ゆっくりひらく。












----DEAR:岳人 

  聞いて!携帯壊れちゃった!だから直るまで手紙書くね。
  本当は手紙じゃなくて言葉で言いたかったんだけど…
  岳人すぐ部活行っちゃうんだもん!早すぎ!

  とまあ、そのこと伝えたかっただけ!バイバイ(^∇^)
 
                  -----FROM:








っ!ったら、可愛いことしてくれじゃねえの!

初めて貰ったの手紙。ただのルーズリーフだけどものすごく嬉しい。

思わず顔がにやける。






「ほお〜、ちゃんも可愛らしいことしとるなあ。」



後ろから声が聞こえると思って振り向けば、からの手紙を

覗き込んでいる忍足。すっげーニヤニヤした顔をしている。腹立つ奴!!



「み、見んじゃねーよ!の手紙を見ていいのは俺だけなんだよ!」



急いで手紙を隠して奴を払う。忍足も顔も相変わらずニヤニヤしている。

絶対俺をからかう気だ。のってたまるもんか。



「俺、帰るわ。じゃな。」



顔を極力平然としたいつもの顔に戻し、忍足に言い放つ。

このままこの場にいたらあいつの言動に乗せられちまう。

ドアに手を触れた瞬間忍足が俺に言う。


「岳人、手紙にはお返事がつき物やで?」

「知ってるよ。」心の中で返事をして部室を出る。



空はもう真っ暗で月と星しかない。といってもここは都会で星はほとんど見えないが。

俺はから貰った手紙を月に照らし、ひとり喜びを噛み締めた。









明日は俺が返事を書こうか、親愛なる彼女に。

たとえそれがくだらないくとも、は歓迎してくれるだろうから。