大好き、大好き。愛してる。

言葉ではこれで精一杯。



どれだけ言えば、貴方に伝わる?







優しい貴方






10月下旬。部活を引退した生徒も多く、残すは大学受験のみ。

教室内は一気に勉強モードになり、半数以上は片手に参考書を持っている。

立海大付属高校は県内有数の進学校のため、東大をはじめとする難関大にも多くの合格者を出している。

勿論、立海大学自体も難関大のため、そのまま進学するにもある程度の知識を要される。

つまりは勉強は欠かせないわけである。







は放課後、教室でひとり、辞書を片手に勉強をしていた。

夕日こそまだ落ちていないが、夜が来るのも時間の問題だろう。





ガラッ





教室の戸が開く。廊下からひょっこりと顔を出したのは赤也だった。

手に数枚のプリントを持っている。が座っている窓際の机に近付き、

勉強をしていた彼女に話し掛けた。




「待たせたな。面談、結構長引いちまった。」

「平気。勉強してたから。」

「何。英語?げ、それ今日の宿題じゃん。」

「もう終わったよ。次は数学。」

「ご苦労さん。あとで見せてな。」

「たまには自分でやりなさい。」





は辞書とノートをパタンと閉じると鞄に閉まった。

後のロッカーからカーディガンを取って羽織り、鞄を背負った。

赤也はドアに止しかかりまだかまだかと待っている。




「置いてくぞ。」



「ちょっと、待ってって。」









◇









玄関を出ると、さっきまで西にいた太陽は消えていて、

月と電灯だけが暗闇で光っていた。

ここ最近、温暖化の所為か気温が高く、ブレザーを着るのも暑いくらいだったのに、

今日はカーディガン無しでは寒いほど。もっとも、夜は冷えるものだが。





「寒いね。」

「だな。」

「しかも真っ暗だね。」

「だな。」



赤也は鼻をズズっと吸うと手をポケットに入れ、二人で駐輪場に向った。

は彼を見るとクスッと笑った。赤也が彼女を見る。



「・・んだよ。人の顔見て笑うなって。」

「笑ってないよ。寒いの?風邪ひいた?」

「あー、わかんね。引いたんじゃね?」





赤也は自転車の鍵を入れると、サドルに跨った。






「、今日バスだろ?」

「うん。今朝雨降ってたからね。」

「乗ってくか?自転車。」

「そのつもり。」



がニシシと笑った。赤也も笑う。



「まあ、俺も無理矢理にでも乗せるつもりだけど(笑)」

「乗って欲しいんでしょ?(笑)」



は赤也の自転車の後に乗ると赤也の体に抱きついた。

テニスで鍛えた大きな体、大きくて優しい背中。

赤也はが乗ったことを確認すると、アスファルトを蹴った。





「出発しまーす。」


























「ねえ、赤也。」


「ん?」




学校を出て数分、は赤也に抱きついたまま話しかける。

赤也は返事をするものの、後を向くのは危険なため前を見たまま返事をした。





「今日の面談って、大学の事でしょ?」


「ああ。密室でセンセと一時間二人きりだぜ?」


「フフッ、いい体験じゃない。・・・どこ受験するの?」


「んー。俺はテニスできればドコでもいいんだけど。

 でも、幸村部長から立海来いって言われてるからな。校内推薦受けるつもり。」


「・・・そっか。」


「は・・・・東京の女子大だっけ?」


「うん。・・・・離れちゃうね。」


「んまあ、そうなっちまうな。」


「そうだよね。」






が黙り込む。頭を赤也の背中につける。

何かを察した赤也は口を開いた。





「淋しいか?」


「うーん。ちょっと。」


「・・・ダイブ、の間違いだろ?」






キキーッとブレーキをかけ、自転車が止まる。

は「わっ」と少しビックリして赤也の顔を見上げた。






彼は優しく微笑んでた。大きな手で彼女の頭を撫でる。








「・・子供じゃないんだけど。」


「離れたら、会えばいいだろ? 淋しかったら、いつでも飛んでく。会いに行く。

 だから・・・・・。あーもう!泣くなって。」







気付けば、の目からは涙が流れていた。彼女は必死に拭うも、

涙は溢れるばかりで止まらない。







「うっ・・・クサイ・・台詞。ひっく。」


「あー。うるせ。だー!もう泣くなって。」







赤也は再びの頭を撫でる。彼女は彼を強く抱きしめた。







「馬鹿也。大好き。」







彼は髪をクシャッと掻いて、彼女の頭をポンと叩くと地面を蹴った。

自転車が再び動き出した。これは彼の照れ隠し。


















(優しい貴方、ずっと大好き。)


















































('07 赤也誕生記念『ヤ』)