スランプに陥(おちい)った。テニスにおいても勉強においても。

スマッシュは決まらない。サーブも決まらない。

テストは5割が赤点。これはいつもの2割増。


(・・・本当、ついてねえ・・・)







RUN!







夏休みが終わり、秋に突入。なのに気温は未だに夏と変わらず、

半袖でも暑いくらい。長袖なんて持っての外(ほか)。団扇が手放せねえ。

その所為で、(夏休みが終わった所為もあるけど)勉強にも身が入らず期末テストでは惨敗。

辛うじて学年最下位は免れた物の、今までで一番酷い成績だと思う。




しかもだ。




テストが返ってきて凹んでいた俺に起きた去らなる悲劇。それが昨日の日曜日。

城成湘南とかいう胸が無駄にでかい監督の学校との練習試合。

『今回は今までとは違う形で試合に臨む!』だとかいって、俺はシングルスから

ダブルスに変えられた。しかもパートナーは丸井先輩。

「俺の足ひっぱんなよ。ケーキ奢らせるぞ?」とかなんか言い出すし。

(冗談だとは思ってたけど)

相手はよくわからねえアイドルみてえな双子。もともとダブルスは向いてねえ上に

相手の所為で先輩の機嫌は悪くなるしで、結果は最悪。

真田副部長にも怒鳴られる始末。ケーキの奢りはなかったけど。



負ける相手ではなかったことに更に後悔が増える。













*












座っていたブランコを軽く揺らす。公園だというのに子供はひとりもいなくて、

ブランコのキイという摩擦音が公園に響く。時刻は6時。部活は無い。






(なんか全部駄目だな、俺)








全ての物事に嫌気がさし、溜息が零れる。

このままテニスやってていいんだろうか、なんてらしくない事も考えてしまう。

と、その時ブブブブと携帯のバイブ音が鳴った。俺のポケットの中でブルブルと震えている。

そこには一通のメール。珍しい、からだ。





『---今何してる?』






俺は適当に返事する。





『---ぼけーっとしてる。』






すぐに返事が来た。





『---嘘付け。凹んでるくせに。』






(なんでわかるんだ?)不思議に思い返事をする。






『---なんで分かるんだよ。』



『---あ。図星?公園入口みて。』






に言われるがまま公園の入口を見る。そこには笑顔で手を振っている。

部活でも学校指定でもないジャージを着ていた。彼女は俺の方へ歩み寄る。






「やっぱ切原だったんだ。」


「なんでいるんだよ。しかもジャージ。」


「ジョギングの途中。このジャージ可愛いでしょ?」


「はいはい。」




適当に返事をする。そういえばコイツ、仁王先輩に告白するためだのなんだの言って

ダイエット宣言をしたんだっけ。3キロ痩せたら告るんだーとか教室で叫んでたし。




は俺の隣のブランコに座り、こぎはじめた。

キイという摩擦音が再び公園に響く。俺は彼女に話しかける。









「ダイエット実行してんのかよ?」


「そ、今日で4日目。なかなか痩せないものね。」


「痩せなくてもいいんじゃね?対して変わんねえよ。」


「そんな気持ちじゃ、仁王先輩の彼女に相応しくないわ。」


「仁王先輩好きな人いるよ?」


「知ってるよ。それでも好きなの。」


「ふーん。」










失恋確実なのに良くできるな。感心する。すると、思い切りこいでいたのブランコが止まり、

彼女は俺を真直ぐ見た。そして口を開く。






「今日の切原、らしくないね。」


「んなことねえ。」


「なんか落ち込んでる。なんかあった?」






なんでわかるんだか。俺ってそんなに顔に出やすいのか?

コイツに隠しても意味は無いか、と判断し俺はポツリポツリと口を開く。





「なんつーか、テストもテニスも上手くいかねえんだよ。」


「・・・・・」




は無言なのまま俺を見る。なんだよ、なんか喋べろよ。

少しを睨むと彼女は一度目線を逸らし、また俺を見た。





「それだけ?」


「・・・ああ。」


「なんだ。もっと重要なことかと思った。」


「十分重要だろ!?」


「切原のテスト悪いなんていつものことでしょ。」


「いつもより多いんだよ。赤点の数が。」


「今回は全体的に難しかったもん。あたしも赤点1個あるし。」


「テニスも負けたし。」


「それは練習不足なだけじゃない?または余裕の気持ちがあったからとか。」


「・・・・・・。」








まあ、余裕を確信していたのも強(あなが)ち嘘じゃねえ。俺は返事に困り

俯いた。するとが立ち上がり、俺の腕を取った。







「切原もジョギングする?いや、しよう!」


「は?」


「走るときって無になれるんだよね。何も考えなくていいみたいな。」


「ふーん。」


「よーし!いくよ!」







は意気込むと俺のカバンを勝手に背負い、走り出す。

そうなると必然的に俺も走る羽目になり、慌てての後を追う。

コノヤロウ、全力疾走してやがる。しかも地味に速いし。







「カバン返せ!」


「やだ!」


「全力疾走してんじゃねえよ!」


「切原も全力で走ればいいでしょ!」






俺も全力疾走でに追いつく。そして彼女の腕を掴んだ。

彼女は息を切らしていて、肩で息をしていた。






「疲れてやんの。」


「走ったから。」


「馬ー鹿。カバン返せ。」





俺はが腕に抱えていたカバンを奪い、背負う。

彼女は俺を見ると微笑んだ。





「走ると気持ちいしょ?スッキリしない?」


「まあ、そうだな。」


「じゃあ続き行きましょうか。」







まだ走る気かよ。どれだけ痩せたいんだ。なんてことは感じつつ

きっとこれはなりの励ましなんだな、と思ってみる。

俺も右足を踏み出し、の隣に並ぶ。彼女の顔を見てニヤッと笑う。





「しゃあねえ、付き合ってやるよ。」










(建物と建物の間から見える夕日がとても美しく見えた。)











































('07 赤也誕生記念『ラ』)