アイツは勉強も出来て、運動神経もよくて、 おまけに字も綺麗だし、リーダーシップもあって人望も厚い。 そんなお前がむかつく。 凛とした瞳とか 艶やかな唇とか、 全部むかつく 「ー!こっちの資料目を通してもらってもいい?」 「!ここの配色なんだけど。」 「ちゃん、生徒会の人からの伝言で---。」 昨日一日教室に居て、の名前を聞いた回数68回。 さすがクラスの指導者。引率者。学祭クラス委員。 数えている俺も俺だが、呼ばれているコイツもコイツだ。 今は学校祭準備期間。年に一度の海原祭の準備期間。 おかげで部活も休みになり、俺はクラスの雑用へと回される。 体育祭はいいんだけど、文化祭となるとどうも気が向かない。 だって俺、バリバリの体育会系だし? 別にサボってもいいんだけど、サボったことがばれた後の副部長の鉄拳が恐ろしくて 俺にはそんな勇気がこれっぽっちも出ない。 それ以上に、身近にという敵が居て、 こいつは副部長より怖い存在だと俺は踏んでいる。 そして、そんなヤツが俺の目の前でスヤスヤと寝ているのは何故だろうか。 準備が出来る時間は夜7時まで。片付けも含めれば7時半まで。 それを破ればクラスに厳しい罰則があるとかないとか。 そんな規則があるため、俺らのクラス(2年5組)はきっちり時間丁度に終わる。 おまけに掃除もバッチリ。先生方からも好評なようで、 クラスの奴等はそれを誇りに思ってるようだった。 まあ、それはさておき、何故がここ教室で寝ているか、だ。 7時半丁度に掃除を終え、下校した全校生徒。 コイツは実行委員だからそのあとは会議に回る(らしい)。 俺はそんなことも知らず即行下校した。が、筆箱と宿題を忘れたことを 帰り道(しかもあと数十メートルで家という地点)で思い出し、一気にUターン。 学校に着いたら既に9時を過ぎていた。夜の学校は不気味で、 何か出るんじゃねえかと思えるほど、静かだった。 そして早歩きで教室に来て見たらこれだ。 「マジに寝てんのか?」 がスヤスヤとお眠りしているわけ。 警備員は毎日10時に来るらしいから、まあ怒られる事はないと思うが 夜中に教室で寝ているってどうよ? しかも無防備すぎるし。 の寝ている右横の机の椅子を静かに引き、横向きに腰をかける。 右手で頬杖をつきながら、まじまじとの顔を眺めた。 スースー寝息を立てる彼女に独り言のように呟く。 「お前無防備すぎるぞ。」 「危機感ってもの持てよ。」 「知ってるか?山本と吉岡、それから竹下もお前のこと好きなんだとよ。」 「キリリとした目がイイとか、プルンとした唇がいいとかほざいてたぞ。」 「狙ってるわけ?モテル女ってのを。または媚売ってる?」 「本当、お前むかつく。なんなの?」 相変わらず、彼女は無反応で、俺は少し顔を顰(しか)めた。 実力行使ってことで彼女の頭を優しく叩く。このまま放って置いたら可愛そうだろ? 「サン、もう夜ですよー。」「・・・・」 「9時半なっちゃいますよー。」「・・・・」 少しずつ彼女の頭を叩く強さを強くしても、一向には起きない。 「起きねえと、無理矢理襲うぞ。。」「・・・・っ」 彼女が反応したかと思うと急に顔をあげ、真っ赤な目で俺を睨んだ。 その目のきついこと。俺はちょっと怯んだ。 「何泣いてんだよ。まさかずっと泣いてたのか?」 「・・・・でよ。」 「何?」 「むかつくんなら放って置いてよ!関わらないでよ!」 「な…んだよ!その言い草。折角起こしてやっただろ!」 「知らない! 私はモテル女も狙ってない!媚も売ってない!アンタにむかつかれる理由がわかんない!」 行き成り怒鳴る。 目も顔も耳もを真っ赤にして口を固く結んで。 なのに目からは大粒の涙がこぼれていた。 (言っている事と顔が逆じゃねえかよ) 「あー!もうむかつく。俺帰る。」 「別にアンタと帰る約束してないし。とっとと帰れ。」 「ガミガミ言うんじゃねえよ。」 ガンッと教室のドアを蹴り、を置いて帰る。 自転車を不機嫌度MAXでこぐ。信号も軽く無視して即行で家に帰る。 家についても夕飯を食う気にもなれず、母親には風邪ひいたといってすぐにベットに入った。 バタンとベットの上で仰向けになり、天井をジーッと見つめる。 そもそもなんであんなには切れてたんだか。 てゆうか俺の言葉聞こえてたんなら反応ぐらいしろっつーの。 心のモヤモヤが晴れない。スッキリしない。 (んだよ!あの泣き顔!むかつく!) コンコンとドアをノックされ「赤也、お友達が忘れ物届けてくれたわよ?」と母親が言う。 「んあ、サンキュ。」俺はドアを開けその忘れ物を手にする。 ああ、俺筆箱と宿題忘れてたっけ。 宿題という妙な現実を思い出し、ますますブルー気分な俺。 「さんって子が届けてくれたわよ。明日お礼言いなさいね。」 そういって母親は俺の部屋を後にした。 「ふーん、が。」 ちょっとだけ、何でか知らねえけど嬉しくなった俺は、 仕方ないから明日、勉強も出来て、運動神経もよくて、 字も綺麗で、リーダーシップもあって人望も厚い、 凛とした瞳とか艶やかな唇とか全部がむかつくに謝ってやろうか。 なんて思ったりした。 (後日、俺のモヤモヤはからの告白によって晴れることになる) ('07 赤也誕生記念『リ』)