止まる事無く過ぎゆく時間と 留まる事無く流れる日常。 良く言えば平和。悪く言えば平凡・単調。 別に、学校は嫌いじゃない。大好き、なんて言ったら嘘になるけど。 ただ、何か刺激が欲しくて、ちょっとだけ冒険してみようかな、なんて思って。 学校帰り、いつもとは違う道に行こうと自転車を左折させてみた。 そのまま真直ぐ自転車で走ること50分。右手に川と河川敷が見えて、 丁度良く橙色の夕日も見えたりして、「あ。いいかも」なんて思っていたときのこと。 君といつまでも 河川敷に降りて、自転車を止める。草原(くさはら)が風でサワサワと動いていて、 私はそのままその草原に座った。風が私の頬を優しく触る。 「キモチー」 バタンと自分の体を倒し、空を仰ぐ。西の空は夕焼けで、東の空は深い青。 青から橙へのグラデーションが凄く綺麗だった。 そのまま目を瞑る。草の匂いを感じ取る。風の声を聞き取る。 なんてロマンチックなことを言ってみるけど、実際は少し眠いだけ。 うつろうつろとなってきて、本格的な眠りに入る。 * 「?だよな?オーイ」 誰かの声が聞こえて、体を軽く揺らされた。 まだ重たい瞼をゆっくりと開く。空はさっきよりも濃い青になっていて、 でもまだ橙色が残っていることからそれほど時間が立っていないことが伺われた。 横を見れば、クラスメート ―――― 切原赤也 「ん?きり・・・はら?」 「ああ、やっぱだ。」 彼、切原赤也はそういうと私の横に座った。私は自分の体を起こす。 切原の頬は少し赤く火照っていて、部活帰りだと思われた。 なぜここに切原がいるのだろうかと疑問に思っていると、 それを察した切原が口を開いた。 「その顔、『なんでここにいるの?』って思ってるだろ。」 「うん。まあ。部活帰り?」 「そう。ここ、俺ん家の近くなんだよ。お前は?」 「何となく眠くなったから寝てただけ。」 「そうじゃねえって。何でここに居るのって話。」 「ああ、それは・・・なんとなく?」 はぐらかした様に笑うと切原はククッと笑った。 そして今度は切原が体を倒した。 「ここで寝るとキモチイよなー。風とか日光とか絶妙で。」 「ね!私も今日発見した場所なんだけど。寝ちゃったよ。」 「知ってるし。お前は豪快に寝すぎ。襲われたらどうするんだ?」 「誰も襲いやしませんって。こんな幼児体系を。」 「それもそうだな。」 「・・・ちょっとは否定してよ。」 グイッと腕を引っ張られて自分の体が後ろに倒れる。 勿論引っ張ったのは切原。 「一緒に寝ようゼ?」 「切原が言うと変態臭い。」 「うっせ。」 草原に寝転がった私を切原。横を見るとすぐ近くに切原の顔があって、 少し緊張した。 切原が深く息を吸って止め、「プハー!」と吐き出した。 「落ち着くー。」 そう叫んだ切原はちょっと可愛いくて、思わずクスッと笑ってしまった。 「んだよ。」 「別に。可愛いなって。」 「あんなー、男は可愛いって言われても嬉しくねえんだよ。」 「いいじゃないの。たまには。」 あ、そ。と切原が言うと彼はまた目を瞑った。私も目を瞑る。 心臓がやけにバクバクしていて、きっとこれは冒険したからだと自分に言い聞かせる。 だって、初めての土地だもの。ワクワクドキドキするはずだもの、と。 3分ほど経った頃だろうか、無言に耐え切れず私は体を起こし 制服のスカートをブレザーを軽く掃った。 「帰んの?」 「うん。お腹空いて来たから。」 「あ、そ。」 切原も起き上がりブレザーを掃った。 髪の毛にも草がついていて、切原は気付いていないみたいだった。 言おうか言わないか迷っていたけれど、草がついた髪も可愛いんじゃないかな、 という私の独断で彼の髪ついては何も指摘しないことにした。 「じゃあ、優しい切原くんがさんのために送ってあげようか。」 「何ソレ。疲れてるんでしょ?いいよ。」 「甘えとけって。」 * 自転車に乗り、元来た道を戻る私。隣に切原。 夕日もすっかり沈んでいて、青空は夜空に変わっていた。 私を切原が自転車をこぎ始め、少し経った時、 無言だった彼が突然話し掛けてきた。 「・・・お前の家、この辺じゃないだろ?」 「うん。全く逆。」 「なんでここに居たわけ?」 「刺激を求めて冒険したの。」 切原の顔を見ると頭にはハテナマークが浮かんでいるよう。 でもすぐに理解したのか、フッと笑った。 「なんだそりゃ。平凡な毎日に飽きたってトコロか?」 「まあ、そんなトコロ。偶にない?そう思うこと。」 「生憎、俺は平凡な日常が好きなんで。」 今度はニヤッと笑う彼。不意にもドキッとしてしまった。 そんな気持ちを顔には出さず、フーン、なんて思っていると 切原が続けて言った。 「でもまあ、こうしてと話すのも悪くねえかな。」 切原が笑う。私もつられて笑う。 自転車のライトが二つ、秋の夜道を照らしていた。 (私も悪い気はしないのは事実) ('07 赤也誕生記念『キ』)